04
「俊…」
「さよならは…言わない」
「うん」
「また会おう」
「…うんっ…」
本当に馬鹿だね。
もう会えないって、分かってるのに。
だけど俊は…さすがだね。
「名前―…大好き」
君のその一言で、私は馬鹿みたいに安心しちゃうよ。
「私も、大好き」
きっと未来は一緒に居れるなんて、思っちゃうよ。
「絶対に、忘れない」
「…ん」
ぎゅーって最後にお互いを抱きしめて。
ふっと離れた。
私は新幹線に乗って、ほぼ同時にドアが閉まる。
今の今まで俊が抱きしめてくれていた身体。
君が離れてしまったせいで、どんどん冷たくなっていくよ…。
「……」
「……」
新幹線が走り出して―…
最後に見た俊は、涙をいっぱい目に溜めながらも笑ってくれてた。
その顔が、何だかいつもより幼く見えた。
さよならは、言わなかった。
だけど涙は、いつまで経っても止まってくれる事はなくて。
俊…愛してるよ。
もうこの声は届かないのに、何度も何度もそう繰り返した。
いつかまた、君と―…
“名前―…大好き”
君の顔を、声を、体温を―…全てを一生、忘れない。
大好きだった。愛してた。
私が一生を捧げても良いと思ったのは…
君が最初で、最後だから。
さよならは言わずに
(君との思い出だけは、いつまでも鮮やかで)
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