春風舞う季節と共に | ナノ


カデスの流れ星

一風変わった新入りが仲間入りしたらしい。
そんな噂が流れ出したのは、その新入りが牢獄に入って間もないことであった。


「紹介しよう、昨日、新入りが入ったのは皆知ってるな。……こいつが新しく仲間になるチビだ」


カデスの囚人のリーダーであるアギロから紹介されたのは、自分達の胸の辺りまで届くだろうかというくらいの身長の、小柄な少女であった。


「おっす、ユランて言うっす! よろしくお願いするっす先輩方!!」


「お前はなぁ……何なんだそのノリは。普通にしてろ普通に」


「いったーー!! ちょっ、殴ることはないんじゃないのアギロさん!!」


昨日カデスに入ったという少女だが、アギロはすでに慣れた様子でユランに拳の制裁をお見舞いしていた。それだけでも呆気に取られていた囚人達であったが、それ以前に少女が牢獄に入ってきたということが驚きである。


「嬢ちゃん……こんなとこにくるなんて、一体どんなことをやらかしたんだい」


「嬢ちゃん?! ……まぁ、チビよりはマシね。別に私何もした覚えないわよ」


少々キツめな外見であったが、喋り口調はさらにキツめであった。
そんな少女に、囚人達は生暖かい視線を向けている。


「そうかいそうかい、ここに来た囚人は皆そう言うんだぜ」


「まぁ、ここに来る前に少しやんちゃしてたのは確かだがな」


どっと囚人達が笑い出す中、ユランは一人憮然とした表情を浮かべていた。


「アギロさんっ、コイツらのどこが“根は良い奴ら”なの?! アギロさんみたいなガラの悪い奴ばっかりじゃない!!」


「まぁ、そう言うな。というかお前、俺にもコイツらにも失礼すぎるぞ」


「当たり前でしょ! 私が敬うのは後にも先にも長老様だけなんだから!!」


「長老……?」


どこの子だコイツは。囚人達誰もが思ったことである。


「まぁまぁ嬢ちゃん、そうカッカせんでも」


「そんなんじゃ、これからカデスでやっていけんぞ」


「そうそう、年長者の言うことは聞いておくもんだ」


次々に囚人達からたしなめられ、彼らの年齢の二分の一にも満たないような歳に見えるユランはまるで諭されているような気分であった。……本当は自分の方が年上なのに。


「くっ……こんなん数の暴力だわ」


呻くユランに、アギロはにんまりと笑った。


「ナメられたくないんだったら、それなりの働きをするんだな」


「そう……何か功績を残せば良いってわけね」


キラリと、ユランの目が何かを思いついたように輝く。
この時、あたかも流れ星のようなこの少女がカデスを根底から変えてしまうことになろうとは、誰も考えていなかった。










カデスの流れ星
(はてんこうな しょうじょ が あらわれた!)



―――――
カデスの人達はもともと何やってた人達なんだろ……。多分、良い人ではあるけどガラの悪い人達ばっかなんじゃないかという、冬生の想像です。

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