ルディアノの真実
「私達、どこら辺まで来たのかな?」
「この階段を下れば、もうすぐ着く」
「ふーん」
暗くどんよりとした空気の建物に響く、二つの声――ユランとタクトは今、ルディアノの城にいた。
「足元に気をつけろよ」
「分かっ……たぁぁっ?!」
ズザザッと言う音を残し、タクトの隣から人の気配が消えた。
「いたたぁ……階段がこんな足場悪いとか……」
「……だから気をつけろと言ったんだ。古い建物なんだから当たり前だろ」
階下から自分を恨めしげに見上げるユランにタクトは苦笑する。そして、階段を下りると、ユランに手を差し延べた。
「…………ありがと」
不満げながら、手を取り立ち上がったユランに怪我が無いことを確認し、そしてそのままスタスタと歩き出す。
「え、ちょっと手……」
「君がまた、いつ転ぶか分からないからね」
「そーだけど、さー」
戸惑うユランの手を引き、暗い廊下をひたすら歩く。
実は、ユランが転んだのはこれが初めてではなかった。
まず城の庭園で一回(瓦礫でコケた)、調理場で一回(モンスターでコケた)、城の外通路で一回(やっぱり瓦礫でコケた)、そして今の階段で転んだ計四回である。
「全く……何回転べば気が済むんだ」
「んなっ……私だって好きで転んでるんじゃないんだから!」
「はいはい、それは分かってるから」
ムキになるユランを適当に受け流す。もうすぐ広間に着く頃だ。
「メリア姫、いるかなぁ」
「いたとして……あまり想像したくないな」
「何で?」
「メリア姫というのはセントシュタインの姫と瓜二つなんだろう。……あの黒騎士同様に白骨化している、フィオーネ姫に激似なメリア姫を見ることになるかもしれない」
「……夢もロマンも無いこと言わないでよ」
ユランもそれは有り得なくもない、と思っているのか、顔を引き攣らせていた。姫が白骨化などという事態にになっていないことを祈るばかりである。
「て言ってもなー、人がいなくなるだけでこんなに荒れるものだったかなぁ」
「どういうことだ」
「いや、建物はしょうがないとしてもさ、元はここって人が住んでたはずでしょ? 毒の沼が噴き出すとこに国が興るわけないじゃん」
昔は毒の沼が無かったのではないか、と思うわけで、つまりは……
「そのせいでルディアノは滅んだ……?」
「まぁ、調べてみないと分かんないけどね」
そう言って、ユランはいつもの調子に戻ってしまった。
(コイツは天然なのか鋭いのか……よく分からないな)
おそらくはどちらとも……なのだろうが、目の前の少女を見るだに、そんな感じはしない。なにしろ、この少女は謎が多い。
「あ、扉……?」
しばらく歩いていると、大きな扉に行き当たった。目的地まで、あと少し。
「これが城の最奧――玉座への扉だ。黒騎士も、ここに来ているかもしれないな」
城の中では一度として出会うことの無かった黒騎士・レオコーン。ルディアノの騎士ならば、城内に詳しいはずである。
「そっか、もしかして、メリア姫もいたりしてね〜。よしっ! じゃ、開けようか……!!」
冗談めかしたユランは、勢い良く観音開きの扉を開けた。
そして二人は、目の前に広がる光景に驚愕する。
ルディアノの真実
それはまだ、明かされない真相。
―――――
タクトはルディアノ王家の遠縁で、だからルディアノの最後を知らない。そんな微妙なルディアノ愛国者←