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Shopping in St.Sutein!

「お買い物に行きましょう!」


何を思い立ったのか……お嬢様僧侶の言葉に、他の二人はただ目を瞬かせて聞いていた。


「無事ぬしさまの事件も解決したことですし、船は明日出航予定らしいですし? 少しくらい休みを取ってもバチは当たらないと思いますの」


というのがお嬢様僧侶――カレンの主張である。


しかし、一体何を買うのか。
素朴な疑問に、カレンはさも当然と言った風に答えた。


「もちろん、お洋服に決まってますわ」


「……服?」


どーんと断言したカレンに、しかしリタは釈然としない面持ちだった。
アルティナはというと、渋面で事の成り行きを見守るばかり。特に反論は無いらしいが、また面倒臭いことを言い出したとばかりに溜息をついた。


「溜息がまる聞こえですわアルティナ。アナタのことですから、どうせ“くだらない”とでも思ってるんでしょうけど」


「思ってない。……面倒だとは思うが」


しれっと答えたアルティナにキレたカレンは、「そんな事を言うんでしたら、アナタには何も買って来ませんわーっ!!」と叫ぶ。
一応、アルティナにも何か買うつもりだったのかと意外に思ったリタだったが、騒々しくなってきた口ゲンカに頭を抱えた。


「二人とも、無理に仲良くなれとは言わないけど……」

せめてもう少し静かにして欲しい。

ちなみに、リタ達が今いる場所というのがツォの浜の宿屋なわけで、このやり取りはかなりの近所迷惑になっている。


結局、リタもカレンの買い物に付き合うということで話がついたのであった。










「こちらなどいかがでしょう? あと、こちらのワンピースもお似合いだと思うのですが」


「……えぇーと」


お店の店員に様々な服を勧められるが、この店のようにきらびやかな店に来たことのないリタは戸惑うばかりである。

リタ達がやってきたのは、セントシュタインにあるとある洋服店。


ファッションと言ったら花の町サンマロウなのだが、セントシュタインにもそれなりに良いお店があるから、とカレンは洋服選びにこの街を選んだのだった。


「リタでしたら、これもこれも良いのではないかしら!」


(これはどうすれば……)


カレンも嬉々としていろいろな服を持って来る。
服を選んでくれるのは嬉しいのだが、店員やカレンがあれやこれやと選んだのはヒラヒラビラビラとした可愛らしい服達……しかし、どこからどう見ても機能的ではない。

口を挟める状況でもないため、何も言うことができない。そんなリタに(無作為に)助け舟を出したのは店員だった。


「お客様、ご要望などありましたら遠慮なくお申しつけくださいませ」


そう言ってにっこり笑う店員に、リタは一言だけ、


「それじゃあ、あの………」


もう少し、動きやすいものをお願いします……。


リタは、それら服のどれかを着て走り回る自信も汚さない自信も全然無かった。

そもそも、天使界では指定の服を着ていたためファッションとはとことん無縁だったリタである。「服装こだわれ」と言われても無理な話であった。


リタの買う服が決まったのは、それからかなり経った後のことだ。
とことん選び尽くしたその次には試着があり、着たり脱いだりの繰り返しをさせられたのだ。
「一生分の服を着たような気がする……」とは服を選び終わった後のリタの言葉である。





「リター?」


店を出ると、リタの姿が消えていた。
「ちょっと外の空気を吸ってくる」というリタをカレンは止めなかった。慣れない事をしたせいか、リタがふらふらしているのを見たからだが、すぐそこにいるだろうとつけていた見当は外れた。


「どこに行ってしまったのかしら」


セントシュタインには来たことがあると言っていたので、迷子になることはないと思うけれど。


「あ、カレン! こっちだよー」


声のする方に目を向けると、露店にしゃがみ込むリタを見つけた。


「どうしましたのリタ」


「んー、アルに何か買ってこうかと。……はっ、もしかしてすでに何か買っちゃってたりする?!」


「いえ、あの店には戦士向けの物はありませんし……」


他の店に行かないとだろうかと思っていたところだった。
「そっか」と安心したリタの手の上には銀のリストが乗っていた。


「それをアルティナに? とてもシンプルなものを選びましたのね」


「んー……アルはね、ゴテゴテしたものが嫌いなんだってさ。だから甲冑もあまり好きじゃないって」


つまり、きらびやかなものと動きにくいものが嫌いってことか。

確かに、アルティナが甲冑を着ているところを見たことがない。付き合いがまだ浅いせいかと思っていたが、そういう理由があったのだ。


「良いと思いますわ。リタが選んだものならアイツも喜ぶでしょうし」


ぶっちゃけ、何を買えばよいか悩んでいたところだったのだ。アルティナのために悩むのが嫌になって、嫌がらせ以外の何物でもないことをしようとしかけたところである。


「助かりましたわリタ。危うくステテコパンツを買うはめになるかと……」


「ええぇぇステテコ?!」


こうして、セントシュタインでの買い物は終わったのであった。




帰り道、新しい服に身を包んだリタを見て、カレンは満足そうに目を細めた。


「やっぱり……その服似合ってますわ、リタ。とても素敵です」


「そう……? カレンの方がキレイだと思うけど」


「滅相もございませんわ」


そう言うカレンは安らぎのローブに春色スカートを着ている。隣のリタが着ているのはノーブルなマントで、カレン達が選んだ中から一番動きやすいものを選んだ服だ。


「ふふ……アルティナの反応が楽しみですわね」


「え、何で」


リタを見た時、あの無愛想な戦士がどんな反応をするのか……見物だとか、そんな意地の悪いことをカレンは考えながら、リタと共にセントシュタインを後にしたのだった。





Shopping in St.Sutein!(終)




―――――
ぬしさま編が終わった直後でした。
アルがどういう反応をしたかはご想像にお任せします←
あ、セントシュタインの綴りは自信ありません、すみません。しかも服も原作ではセントシュタインで買えない物だったのですが……。
この話はだっせん様に捧げます。こんなでよろしければ受けとってやってください!
気に入らなければ突っ返しちゃってください直ちに書き直します!!


にしてもカレンさん、さすがにステテコパンツはあんまりですよ……。


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