初めてのバレンタインデー
手袋とマフラーが欠かせない季節だった。
暦上では二月十四日と分類される今日は、言わずもがな、バレンタインデーである。
リディアは、セントシュタインで催されている、バレンタインデーセールを発見してしまった。
セールという名前と、店の中のお祭り騒ぎによる変なテンションにより、リディアはチョコレートを購入してしまった。
「リディア、誰にあげるの?」
一緒について来たサンディが問うた。
「え?」
質問の意図がイマイチ分からないリディア。
「アンタ、もしかしてバレンタインデーが何か分からないのに、チョコレート買ったの?」
「……はいそうです無駄遣いしてすみませんでした」
我ながら、息継ぎもせずに言えるなんて凄いと思う。
サンディがリディアにバレンタインについて簡単に説明してくれた。
「天使にそんな習慣ないからなぁ……。うーん、どうしよ。一つしか買ってないし」
さて、誰にあげよう……。
リディアの頭の中では会議が行われていた。
まず、宿屋に帰って誰かに渡す。
そうすると、他の人に見られる可能性がある。そうなると、「どうしてあの人だけに」となんとも気まずい展開になってしまうのは、明らかなことである。
本当は、今すぐチョコレートを買い足せばよいのだが、おそらくもう残っていないだろう。何しろ人数が多かった上に、誰もが我先にと商品をかごの中に放り込んでいた(その光景は、なかなかシュールであった)。
だから、ここは──
「ねぇ」
リディアはサンディに話をふった。
「これ、サンディにあげる」
「えっ?!マジで?!」
驚きを隠せないサンディ。
「うん、皆には内緒だよ。サンディには方舟の件を筆頭に、お世話になってるから」
「アンタってそんなにいい人だっけ?」
「んなっ!!失礼な!!」
リディアはサンディに抗議の声を上げた。
「嬉しいケド、アタシ一人じゃ一箱食べるのは無理カモ。……一緒に食べる?」
「うん。どうしよ、どこで食べようか」
宿屋はログと遭遇するかもしれないし、公園のベンチで食べると、明日の朝刊の記事になりかねない。人間にはサンディが見えないのだから、そんなサンディがチョコレートを食べると、チョコレートが勝手に浮いて勝手に削れていくという怪奇現象になる。
リディアが考え込んでいると、サンディが一つ提案してくれた。
「方舟とかいいんじゃナイ?」
「それいいね。それならさっそくルーラで行こう!」
──いつもお世話になっているあなたに、ハッピーバレンタイン!!
―――――
乳酸菌飲料の真巳衣さんから頂きました。バレンタインのお話です! フリーとのことでしたので、またもお言葉に甘えまして(^-^) 今年はバレンタインのお話をいただくのが二度目です。なんと、チョコを二つ貰うよりも嬉しいかもしれないぞ!←
それにしても、今回まさかのサンディルート! でも、サンディは冒険が始まってからずーっと一緒にいてくれてますもんね。相棒みたいなものですよね!
普段は口にしないけど、バレンタインデーで感謝の気持ち伝えるとか……そんなリディアちゃん、マジで素敵です……!!
真巳衣さん、ほんわり友情なお話をありがとうございました!
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