第三章 07-2
入り口に現れた少女に、リタだけでなくアルティナまでもが呆気に取られてしまった。
金色に輝く髪はウェーブがかっていて、それを後頭部で括っている。
吊り目がちな飴色の瞳に、猫を連想させる顔立ち。
――はっきり言って、僧侶には見えなかった。どうみても、僧侶の格好をしたお嬢様にしか見えない。
「嫌な障気の正体は、お前でしたのね!」
ズビシィッと怪物を指差す少女は、やっぱり僧侶には以下略。
口調から仕草から、何から何までお嬢様な少女に呆然とするリタ達を叱咤したのは、怪物の一番近くにいるルーフィンであった。
「ほらほら、リタさん、アルティナさんっ! ボーッとしてないで! 病魔の相手はそっちの仕事でしょ?!」
「……病魔ですって?」
後ろのお嬢様(多分僧侶)の声に驚きの色が混じる。はやり、この怪物が流行り病の病魔だとは思っていなかったらしい。
「あなた方が戦っている間に、ぼくがこの壷を直しちゃいますから時間を稼いで下さいよ!」
「んなもん、分かってる!」
言うと同時に、アルティナが怪物の前に躍り掛かった。白刃が怪物に襲い掛かる。
相手は反射的に避けようとしたが、避けきれずに怪物の手の付け根を切り裂く。ブシュッと黄緑の体液が空中を舞った。
ボタボタと床に垂れる黄緑色に、思わずその場の全員が鳥肌を立てる。
「……なかなか奇抜な色してるじゃねーか」
「うぅ……切り付けたくなくなったかも」
思わず武器を取り出す手が止まってしまった。結局は扇を構えたものの、あんまりこれで攻撃したくない……というのがリタ、ひいては皆の心境である。
「ワれのジャマをスる者、すベテ ひトシく死あルのミ、のミ、のミ!」
そんな心の内とは裏腹に、怪物は容赦なく攻撃を仕掛けてきた。
(ルーフィンさん、出来るだけ早めに直しちゃってくださいっ!!)07(終)
―――――
ヤツは、なんか黄緑色のモノが出てきそうだなぁ……と。
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