第二章 15
「そういうことで、私は今天使界へ帰る方法を模索しているわけで……」
経緯をかい摘まんで説明したリタは、それからチラリとアルティナを見上げた。
「そしたら黒騎士を退治することになって……」
現在に至る、と。
リタ達は誰かが薪をした跡に手頃な丸太を見つけ、そこに座っていた。位置的にはリタとアルティナ向かい合った感じである。
サンディはというと、リタの肩の上を陣取って羽根を休めていた。
「そーゆーこと。ただの人間が天使を見ることなんてフツーじゃ有り得ないの。つまりアンタフツーじゃないワケよ、分かる?」
「人を異常者みたいに言うな」
サンディの言葉に憮然とするアルティナであった。
「つまり、アンタらは黒騎士を倒せば天使界とやらに帰れるわけか」
「えーと……た、多分?」
「…………」
サンディが言い出したことなので、ハッキリしたことは言えないのだが……。
アルティナは少しの間黙り込んでいたが、やがて腹を括ったかのように一つ溜息をついた。
「そういうことなら、さっさと黒騎士倒しに行くぞ」
すっくと立ち上がるのを呆然と見遣るリタだったが、アルティナは構わず歩き出す。
「何ボサッとしてんだ、置いてくぞ」
慌てて後を追いかけるリタの顔は、まだよく分からないと言う顔をしていた。
「私の話、信じてくれたの?! 何で?!」
「その話、天使界やら星のオーラやらって、作り話の域を越えてるだろ」
それに……と、アルティナは続けた。
「そんだけ壮大な話を即座に作れるほど、お前頭の回転速くなさそう」
サラッとひどいことを言われたような気がする。
「……つまり馬鹿って言いたいんでしょーか」
そう言っているようにしか聞こえないのだが。
アルティナが、今まで仲間を持てなかったのも頷ける。これでは乱闘が起こっても不思議でないだろう。
(分かってる、私でも分かるよ、自分が馬鹿ってことくらい!)
面と向かって言わなくても……とふて腐れたリタだった、が。
「お前みたいな馬鹿は嫌いじゃあない」
アルティナは、確かにそう呟いた。
(もしかして……)
今、なんだか分かった。
口が悪い……というか思ったことをハッキリ言ってくれてしまうのだ、この人は。
(良く言えば正直、だけど)
実際、正直どころの問題ではないだろう。
(まぁ、でも……)
とにかく、アルティナの人物像が少しだけでも掴めた。
それだけで、なんだか一歩前に進めた気がしたリタであった。
(あれっ、珍しく進行方向を間違ってない……?!)15(終)
―――――
決める時は決める、戦士・アルティナ。
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