番外編 お正月のデート大作戦?!4
ひと通り街を見回ったリタは、すっかり満足していた。そろそろ宿に戻っても良い頃合いであろう。
と、そこで今回の外出の目的を思い出した。
「……はっ、何か私ばっかり気分を転換してたような……?!」
すっかり忘れていたが、これはアルティナに外の空気を吸わせてこいというルイーダの頼みであった。
「私が楽しんでどうするの……!!」
「いや、俺も充分楽しんだから」
「……本当に?」
「何で疑う……」
退屈しなかったのは事実だ。
「嘘じゃねーぞ。お前見てるのはなかなか愉快だった」
「愉快……?」
さすが旅芸人、と誉められてもあんまり嬉しくない。リタからしてみれば、ただ一人ではしゃいだりこけたりしていただけなのだから、納得もできない。
「それじゃあ、今度はアルの行きたいところに行こうね!」
「何で。というか、別に行きたいところはない」
「えー……」
それを聞いたリタは、いかにも不満そうな顔をしていた。だから、というわけではないが、アルティナはもう一言付け加えておく。
「お前と一緒ならどこだって良い」
ここまで言っても気付かないだろうか、この鈍感な守護天使様は。
自分でも大胆な発言が多くなってきたとは思うのだが――半分はヤケも入っている――しかし、それくらい言わないと、いつまで経っても何も変わらないままだ。というか、これ以上言ってまだ分からなかった場合、鈍感どころの話ではなくなってくる。
そんなことを考えているとはつゆ知らず、リタは何を言っても無駄だと思ったのか、諦めたようにふう、と息をつき前を向いた。
「な……何それ」
リタはまだ不満そうに口を尖らせていたが、その頬はかすかに上気していた。
「あらー、帰ってたのねリタ」
「あ、ルイーダさん」
ことの発端とも言える酒場の女主人に声をかけられ、足を止める。アルティナは宿に帰るなり、今日泊まる部屋がある2階へさっさと行ってしまった。ルイーダにまた何か言われると思って避けているのかもしれない。そういうリタもルイーダが登場するなり思わず身構えてしまった。
「どうだった? 楽しめたかしら、アルティナとのデートは」
やはり先程のことを聞かれるらしい。ルイーダに捕まるとちゃんと話すまでなかなか解放してくれないんだよな、と諦めにも似た心境であったのだが……最後の一言で全てがふっ飛んだ。
「でっ……デート?」
思わず声が裏返ってしまった。デートとはアレか。自分が認識している、あのデートで良いのだろうか。しかし、先程のは別にデートというわけではないはずなのだが。
「いえ、あのですね、さっきのは頼まれてのことなんですから、その……」
「あら、頼まれても頼まれなくても、男女が二人で遊びに出かければデートになるのではありませんこと?」
そういたずらっぽく告げるのは、リタの背後にいたカレンであった。
「カレンまで……」
「で、どうでしたのリタ?」
「正直に白状なさい」
なぜか、まるで取り調べのようだった。二人から有無を言わせない圧力を感じる。
「いやっ、どうだったと言われましてもいつも通りと言いますかっ……これがデートと言うなら、二人で旅してた時からそう言える気がするんですが……?!」
「ははぁ、なるほど。確かに今に始まったことじゃなかったわねー」
「いえ、そういうことじゃなくて……!!」
何だろう、言いたいことが言えてないない気がする。それどころか、墓穴を掘っているような……。先程のはデートとかそういう意識は全くなかったわけで、突然すぎたということもあり……と言うか、アルティナはそこのところどう思っていたのだろう。頭の中で先程のアレやコレがよみがえり、自分でもよく分からないままに顔が熱くなってきた。頭がグルグルと混乱する。もう、訳が分からない。
「と……とにかくそんなんじゃないですからー!!」
今は何を言っても無駄だと悟ったリタは、それだけ言うとアルティナを追うように階段をかけ上がった。その後ろ姿を見送って、ルイーダがニヤリと笑う。
「これはもしかして……時間の問題ってやつかしら?」
「そうですわね……でも、まだ無自覚みたいですから当分は掛かるのかしら?」
その時間がどのくらいかかるかは分からないけれど。案外すぐかもしれないし、途方もなくかかるかもしれない。
とにもかくにも、(主に)ルイーダとカレンによるお正月のデート大作戦は成功した……と言えるのかもしれない。
終わり。
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もうそんな時期ではないのは分かってますが……あけましておめでとうございました←
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