第一章 10
「ん……あれ?」
まず初めに草の匂いがした。
「ここは?!」
ガバッと身を起こす。目の前にはさっきまで中にいた遺跡が佇んでいた。
「あら、やっと起きたのね?」
すぐ隣には、ルイーダがいた。
「ルイーダ、さん……?」
「あの後、ドサクサでうまく足が抜けたから外に出てきたのよ」
つまり、リタを抱えて遺跡を脱出した……と。
そういうことらしかった。
「それにしても……あなた、見かけによらず強いのね。おかげで助かったわ。名前は何というの?」
「リタです」
「リタ、ね。もしかして……あなたウォルロ村から来たんでしょう。知ってたみたいだけれど、私はルイーダ。セントシュタインで酒場をしているワケアリの女よ」
「酒場……ですか」
酒場……リタには全く縁の無い場所である。
「酒場って言っても少し特殊な店なんですけどね。……さて、わたしはウォルロ村へ向かうことにするわね。あなたはもう少し休んでから来なさい。お礼はあらためて。アデュー!」
「えぇっ、ルイーダさん?!」
引き留める間も無く、ルイーダは颯爽と去って行った。
「……行っちゃった」
しばらくの間、リタは去って行く後ろ姿を呆然と見送ったのであった。
(あ、怪我の手当してある……)10(終)
―――――
短い。
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