第七章 02-1
暖色の煉瓦に包まれた地面、立派な屋敷が立ち並ぶ。
花の町とだけあって、その景観はまさに華々しい。これが、サンマロウ。
華美な門をくぐると、その先には噴水があり、一際大きな建物が目に付いた。
「あれは貿易商の夫婦の屋敷ですわ。けれど数年前に二人揃って亡くなられて、今は娘のマキナさんが住んでいらっしゃるのですが……」
微妙なところで区切りを入れたカレンにリタが首を傾げる。
「どうも変な噂を……いえ、それは行って確かめた方がよろしいですわね」
「?」
リタとアルティナが二人して疑問符を飛ばす中、カレンは構わずマキナという少女が暮らしているという屋敷へと進んだ。そして門の前にたどり着くと、門番らしき青年が仁王立ちで立っていた。まるで、“簡単には入れてやらない”と言うのように。
「ここは町一番の金持ちマキナお嬢さんのお屋敷だ! 知らないヤツを入れるわけには……」
いかない、と言おうとした口は、カレンを見た瞬間ポカンと半開きになった。そして、カレンを指差す。その手はナゼかふるふると震えていた。
「アンタ、何でここに……」
「あら、私がここにいては何か問題でもおありで?」
腕を組み挑発的に言うと、門番の青年は一目散にどこかに駆け出して行った――旦那、カレン嬢が帰って来た!と大声を上げながら。
「チッ……チクりに行きましたわね」
舌打ちをしたカレンがため息をつく傍ら、リタとアルティナは青年の背中を目で追っていた。
「あの人……お仕事はいいのかな」
「さぁな。まぁ手間が省けて良かったが」
彼は門番だったはず。
「カレン、あの人は……」
「昔馴染みですわ。私の家で働いていたのですけれど、なぜ彼が門番なんてしていたのかしら?」
首を傾げながら門を開けた。ギイ、と音を立てて開いた門の先には立派な扉。それも開けると、これまた立派な内装がリタを出迎えた。きらびやかなシャンデリア、古めかしいアンティーク。これぞ貴族、というような豪華絢爛の屋敷。
「あら、あなた達もマキナさんとお友達になりに来たの?」
ふいに部屋の一角から姿を現した女性。その人は何かを大事そうに手に握りしめながらリタ達に話しかけた。にしても、言われたことが何のことだかリタにはサッパリ分からない。
「いえ、あの……私達は友達になりにきたわけでは……」
「あら、そうなの?」
拍子抜けしたような顔をした女性に突っかかりを覚えたアルティナが尋ねる。
「友達になると何かあるのか?」
「え、あなた達知らないの?」
さも当然のように、女性は語る。
「マキナさんはね、お友達になると欲しい物をなんでもくれるのよ。ほら、私もさっきもらったの。友情の証に、って」
そう言って女性が手に持っていたものを差し出した。大きな宝石をあしらった豪華な首飾り。一目見ただけで、相当の値がするだろうことが分かる。
「あなた達も何か欲しい物があるなら、マキナさんとお友達になるといいわ」
そう言って、女性は足取り軽く外へと出て行った。それと同時にカレンがため息をついた。
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