第一章 09-1
「ここが、キサゴナ遺跡……」
とても古い建物だった。
こんなところに、人なんてくるのだろうか……。
しかし、件のルイーダはここに寄ったらしいのだから、中に入って確かめなければならなかった。
(……やっぱり、ニードさん連れて来れば良かったかも)
今更に後悔の念が湧いて来た。
だが、ここでウォルロ村へ戻るのは遠慮したい。
(もしかしたらルイーダさんがいるかもしれないし、こんなところで引き返せない……!!)
そういうわけで、村に戻るつもりはさらさら無いリタなのであった。
遺跡は、六角形の部屋を繋げ合わせた構造だった。
さすが遺跡と言うだけあって建物の中は辺りが暗く、あらゆるところが老朽化している。
人がいるのかどうかも疑わしい。
リタは暗いせいで物に足を取られたり、床が崩れかけたりと、この中に入ってからロクなことが無かった。
「ルイーダさん、本当にこんなところに入ったのかな……」
大分、奥地へと入り込んだのではなかろうか。
「やっぱり、いないかなぁ」
諦めかけたその時。
「誰かそこにいるのかしら?」
女の人の、声がした。
「あらビックリ! こんなところで人に会うなんて珍しいこともあるのね」
「もしかして……ルイーダさん?!」
「どうして私の名前を……」
薄暗い闇の中、声のする方へと駆け寄ると瓦礫に足を取られた女の人を見つけた。
「大丈夫ですか?!」
「大丈夫! と言いたいところだけど……残念ながらあまり大丈夫と言えないわ。ねぇあなた、そこの瓦礫を退けて下さらない?」
「あ、はいっ!!」
ケガは大したことないんだけど足を挟まれちゃって動けないのよねー、とぼやくルイーダ。急いで瓦礫の山を崩そうと奮闘し始めたリタだったが……
どこからともなく、地響きが鳴りはじめた。
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