間奏U 12
カラコタ橋は、変わり果てた姿でそこにあった。
木造の橋は崩壊し、町が炎に飲まれている。
人々が、逃げ惑う。
「なんだよ、これ……!!」
生まれはカラコタではないらしいが、物心がついたころにはすでにカラコタにいた。
故郷に等しいその場所の、無残な光景に愕然とした。
そして、今や家族に等しい留守番を任せた相棒も。
「フィウメ!!」
逃げる人とは逆方向に足を進める。
もともと少ないカラコタの住人の中に、フィウメの存在はない。
橋が崩れ落ちたため、対岸には渡れない。川が隔てているのに、両岸で火事が起こっているのは何故なのか。橋から燃え移ることも有り得るかもしれないが、見る限りそんな風には見えなかった。
依然、フィウメの姿は見えない。
どこに行ったのか。辺りを見回すと、ふと橋の下に片足が見えた。
このあたりは、アルティナとフィウメとデュリオとエリーヌ、四人が生活拠点にしていた場所だ。
まさか。
足首から下、ブーツを履いた右足に背筋が凍る。
しかし、予想は裏切られた――悪い意味で。
「かし、ら……?!」
掠れた声が漏れる。引っ張り出したのは、華奢な体躯とはほど遠い、大人のそれ。
サンマロウでデュリオ達が待っていたはずの、盗賊団の頭領。その人は、視線は遥か虚空にあり、何も写していなかった。
視線をさ迷わせ、最後に……赤く染まった胸に行き着く。
――死んでいる。
「何で……」
「あーあ、ちゃんと隠したつもりだったんだけどなぁ」
ふいに、あっけらかんとした声が後ろからした。――馴染みのある、中性的な声。
振り返れば、いつもと同じ、見知った顔と相対する。
「やぁ、さっきぶり。……アルティナ」
「……フィウメ」(狂気じみた笑顔を除けば)12(終)
―――――
相当な歪み具合です。表現しきれるのか……。
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