第四章 04
「全く、神官様も相当調子のよろしいことですわね。人任せにも程がありすぎますわ」
「はは……でも、神官さんも忙しそうだったし仕方ないのかな」
「人にへいこら謝るよりも、塔に上って大神官様をお連れするほうが断然楽そうに思えますけれど!」
地上に戻っても、言いたいことをズバズバと言うカレンは相も変わらず健在だった。
「……当たり前、かな」
時は人を変えるというけれど、そんな頻繁に変わるものではない。
「リタ、何か言いまして?」
「ううん、カレンさんが相変わらず元気そうで良かったと思って」
にへ、と笑うとカレンは、それからなぜかハンカチを取り出すと泣き崩れた(ように見えた)。当然ながらリタはカレンの突然の謎の行動に戸惑いを隠せない。
「か、カレンさん?!」
「ごめんなさいリタさん。私、先程かなりたくさんそれはもう嫌なことがあったばかりで……」
「嫌なこと……?」
その“かなりたくさんそれはもう嫌な事”のせいで不機嫌だったらしい。
「まぁ、そんなことどうでもよろしいのですわ! さっさと忘れることにしましょう!!」
忘れていいの?とは思ったものの、自分が口を出して良いものか分からない以上、変な詮索はしない方が良いのかもしれない。とても気になったけれど、リタは口をつぐむことにした。
「お久しぶりですわねリタさん! また会えて嬉しいですわ!」
「うん、私も!」
前回地上に落ちた時は、当たり前ながら知り合いなんていなかったけれど、今回は違う。
セントシュタインに行けば、きっとリッカ達は温かく出迎えてくれることだろう。
それに、アルティナもきっと。
(人に見える形でまた戻ってきたって分かったらビックリするかな? それとも……もしかして呆れられる?)
最初こそ分かりにくかった言動や表情も、天使界に戻る直前になれば、だいたいは理解出来るようになった。
驚く様や呆れの顔を想像してると、自然と笑みがこぼれる。
「リタさん?」
「あ……いや何でもないです。さぁ、行きましょうカレンさん!」
つかの間の再開を喜び、そして二人はダーマの塔へと足を進めた。
(ダーマの塔へ!)04(終)
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