間奏U 05
それは六年前、アルティナがまだカラコタ橋で暮らしていた時のこと。
「あー、アルティナ? その持ってるヤツはどうしたんだ?」
粗末な小屋にいたデュリオとエリーヌは、その小屋に入ってきたアルティナ(おまけ付き)を見ていた。……正確には、アルティナの持っているモノを凝視していた。
「そこで、…………拾った」
最低限のことしか言わないデュリオの弟分はいろいろな事情を省き、有りのままのことだけをデュリオとエリーヌに伝える。そのせいでさまざまな誤解も発生したりするのだが、根は悪いヤツではない。
二人はそれが彼の自然体だと分かっているからいいが、初対面の人には第一印象は悪いことの多い少年だった。……まぁ、男に限られる話ではあるが。
そんな無愛想な弟分が、片手に子供を抱えてた。お兄さん驚きです。
「拾ったの?! あらま……誰かさんが、えいやっと捨てて行っちゃったのかなぁ?」
「お前……普通、人間ってのはそこらへんの道端に落ちてるようなもんじゃないんだからさ」
とは言え、子供の置き去りなどカラコタにはありがちなことである。
基本、自分に都合の悪いツッコミを無視るエリーヌはアルティナに一言。
「えっと……猫か犬じゃないんだから、とりあえず首根っこ掴むのやめてみない?」
「これでも全然いける」
「いける、いけないの問題じゃないからな」
何と言うか、倫理的に考えて是非そうして欲しい。せめて俵担ぎとか。
逆に言えば、首根っこを引っつかんで持ってこれるくらいにアルティナが拾ってきた子供は軽くて小さかった。
アルティナと背丈はあまり変わらないのに片手で持ててしまってるのは、相手が痩せすぎてるからなのか、単にアルティナが力持ちなだけか……。
多分、両方ではあるだろうが、それにしてもこの子供はどこの出身だろうか。
「どこの生まれのもんだろうなぁ……。顔つきからしてセントシュタインとかか?」
「そうね、ベクセリアとかにもいそうだわ。あ、でもドミールとかでもありそう」
二人ともそれぞれに予想すると、それからこの子供の処遇はどうするかという話題に移った。
「この子、どうしようかしらね?」
「……ま、こういう時は拾ってきた奴が面倒見るもんだよなー。てことで頑張れアルティナ」
「…………」
拾ったのを……あの道を通ったのを少し後悔したと言うのはさすがに怒られそうなので、それは黙っておこうと思ったアルティナであった。(なんだか面倒なことになった)05(終)
―――――
過去編スタート!
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