第五章 06-1
リタとオリガは、家にいる二人を残して村長の家へと向かっていた。
「あの……お二方を残してしまって大丈夫でしたか?」
オリガの懸念はもっともだった。お二方とは、もちろんアルティナとカレンのことである。犬猿の仲な二人は、これまでも数々のバトルを繰り広げており、その仲裁役は今オリガと共にここにいる。
「あの二人のこと? うーん……ぶっちゃけ、あんまし大丈夫じゃないかも」
「えぇっ……」
その仲裁役は、オリガの質問に対する答えにイマイチ確信が持てないらしい。自信なさ気に首を傾げていた。
「でも何とかなるよ。あの二人、相性は最悪だし、お互いに嫌い合ってるけど……相手の実力は認めてるみたいだし」
「そうなんですか?」
本人達は否定するかもしれない。
だけど、それだけは確信していた。
「大丈夫、何があってもオリガさんの家に被害が出ることは無いから! ……多分」
「旅人さん……」
その“多分”、怖いです。
ついでに、リタの笑顔が苦笑気味なのも不安にさせられる要因の一つとなった。
「いやっ、その……大丈夫! もしもオリガさんの家が壊れてたら私が修理費出すから……!」
慌てふためき、必死になるリタを見てオリガは吹き出した。
「ご、ごめんなさい。あんまり旅人さんが慌てるから……。私も大丈夫って信じてます」
悲愴に彩られていたオリガの顔に、年相応の明るい笑顔が浮かんだ。つられて、リタも笑顔になる。
(やっぱり、悲しい顔より笑顔の方が良いよね……)
ぬしさまの事件を無事解決して、少女がいつでも笑顔になれるようにしなくてはいけない。
決意を新たに、リタは村長の家へと向かったのであった。
[ back ]