キミを繋ぎ合わす





「…っ…あたま…痛い、」

ズキズキする頭を抑えながら、ゆっくりと起きあがる。


「私…どうして…ここ、どこだろ…」


薄暗く、何もない場所だった。
上手く回らない頭に、ゆっくりと記憶を整理する。

…ショッピングモール、爆発、

「安室さんっ!!」


辺りを見回すが、この空間には私だけ。

そうだ。あの男、ショッピングモールで笹川に後ろから襲われ…抱き込まれたまま爆発した。

カタカタと身体が震える。

最後に見たのは、安室さんがこちらに手を伸ばす必死な顔だった。








「お、こんなとこにいやがった。探したぞ、お嬢ちゃん。」


気の抜けたような声に振り返れば、知らない男の人が4人。


誰…?


「ったく。よりによってなーんでこんな所に落ちっかね。」


4人のうちの1人。サングラスが印象的なその人は、私に近付いて腰を折り目線を合わせてきた。


「あの…皆さんは…?ここ何処なんです……っきゃぁ!」


目の前にしゃがんだ男の人が、ニヤリと笑ってから勢い良く私の身体を引いた。
引かれた勢いで、ぽすんとその人の胸に収まる。


「アイツが待ってる。ほら、俺達で送ってやるから。早く行くぞ。」


「待って…私、爆発に巻き込まれて…!」


「大丈夫。お嬢ちゃんが心配する事なんて何もねぇよ。
でもまぁ…そうだな。ここで逢えたのも何かの縁だ。送ってやるついでにひとつ、頼まれてくれないか?」


「…頼み?」


「あぁ。」

「私で…よければ。」


私の返答に満足したのか、サングラスの男性はニヤリとして後ろの3人に振り返った。







わしゃわしゃと頭を撫でられる。
視線をあげれば、ガタイの良い男の人。口には爪楊枝。

「…アイツのこと、頼むな。すぐ無茶なことする奴なんだ。何でも出来そうに見えるけど…案外不器用なやつなんだよ。」




乱れてしまった髪を梳くように、優しく頭を撫でられる。
男の人の少しだけ長い髪が、さらりと流れた。

「無茶したり、馬鹿なことしたら、お嬢さんが思いっきり叱ってあげて。一人じゃないんだって、わからせてやってね。」




ぽんっと、軽く頭を撫でられる。
サングラスの男の人が楽しそうに笑っている。

「情けない顔なんかしたら、頬でもひっぱたいて、しっかりしろって気合い入れてやれ。
ひっぱたくのは思いっきりだ。いいか?手加減なんかすんじゃねーぞ。」




ゆっくりと、優しく頭を撫でられる。
顎髭を生やしているその人は、雰囲気がどことなく安室さんに似ている気がした。

「常に気を張ってる奴だから…悩んだり、立ち止まってたら、心休める場所になってやってね。
俺らには、もう…それが出来ないから。
キミになら…いや、キミに頼みたいんだ。ゼロの事。」


ゼロ。

ゼロって、誰…?


少しだけ悲しさを宿した瞳で4人は微笑む。

表情から伝わってくる。

大事なんだな、その…ゼロって人の事が。




「ゼロって人には、すぐ会えますか?」


「勿論。すぐ会えるよ。」



だから、頼んだよ。


そう言って、私の頭をもう一度撫でた。



「あの…名前…皆さんの名前は?」


「俺は、伊達。」


伊達さん。


「俺は、萩原。」


萩原さん。


「俺は、松田。」


松田さん。


「俺は、ヒロ。」


ヒロさん。


「ほら、行こう。早く。」


ヒロさんに手を引かれて、光に向かってゆっくりと歩きだす。

薄暗いだけの空間だったのに、いつの間にか光へ続く道が真っ直ぐ延びていた。



「伊達さん、萩原さん、松田さん、ヒロさん。」



4人と目を合わせると、優しい笑顔を私にくれた。



「また…………逢えますか?」


「……………………いつかね。」





なんだか離れるのが勿体なくて、少しだけ寂しくて。


光の前で立ち止まってしまった私の背中を、4つの手が優しく押した。




きっと、ここから先は私ひとり。




進んだ先で強い光に包まれると、ゆっくりと意識を手放した。









キミを繋ぎ合わす
(ゼロって、意外と臆病な所あるよね)
(ったく、世話が焼ける…)
(お互いゆっくり進めば良いじゃねーか)
(時間はまだ、沢山あるからね)



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