初めてそいつを見た時はなんか、人形みたいで、ちょっと怖え……そう思ったのをやたらと覚えてる。
桜のあらしのなか、そいつは校門近くの桜の木の近くで所在なさそうに立っていて、全体的に色素が薄い感じで、肌が恐ろしく白いそいつは今にも消えてなくなりそうだった。
それがあいつを初めて見た瞬間。
俺はその時中学二年の初日で、あいつは転校の初日だった。
校門のとこに立ってた奴が、転校生を紹介するぞとかいう担任と一緒に教室に入ってきた瞬間、ザワツイてた教室が一瞬静かになった。
理由はやっぱりあいつのせいで。白くて色の薄い、綺麗過ぎるそいつにクラスの奴みーんなクギヅケで。
「やまだ、さあらです。よろしくお願いします」
ペコリと頭を下げて、ぎこちなく笑うそいつ……さあらはようやくちょっと人間に見えた。
「なあ、さあら」
「なぁに?公平」
旅行に行って誰もいない俺んちのキッチンでエプロン姿の恋人さあらを呼べば、俺が好きな甘ったるい声がすぐに返ってきた。
3年前人形みたいだったさあらは、相変わらず今も人形みたいに綺麗なまま成長したって感じで、でもあの頃はぎこちないだけだった笑顔は、今は振り向いて俺を見つめて花が咲いたみてーで。たまんなくかわいい。
「まだ?」
「まーだ。さっきから3分毎に言われてもそんなにすぐにはエビフライ食べられません」
「腹減ったんだって」
「わかったから待って」
クスクス笑うさあらはほんとにかわいい。
3年前。俺がボーダーに入ったのが中学2年になったばっかの頃。
さあらが転校してきたのも同じ頃で、転校してきた理由がさあらもボーダーへ入るためだったらしい。
ボーダーの入隊式でまさかの隣同士だったときは流石に驚いた。
何しろさあらと来たら、学校ではちょっと綺麗すぎるところはあるけどほんとに普通の女子で。
まぁそれを言ったら多分俺も同じ普通のガキだったと思うけどな。
で、そっからさあらとちょっとずつ喋るようになって、模擬戦なんかもやったりした。
俺は射手で、さあらは銃手志望。似たような中距離ポジションだったこともあって、あーだこうだ二人で色んな話をして、時々はお互い弱音を吐いたり、励まし合ったり。
そんなのしてたら、当たり前だろ。
恋に恋する青春真っ只中の14歳だぞ。
そんなの好きになるに決まってんだろ。
だって、さあらかわいいし。半端じゃなく綺麗だし。そんなやつが自分の隣で笑ってるとかさ。無理だろ。好きになるって。
結局そのままB級に上がる頃にはさあらに告白して、えーっと私も多分?好きだと思う。ってちょっと曖昧だっただけ返事をもらって。付き合い始めて。
そこから3年。俺、出水公平は相変わらずさあらに惚れてる。
多分さあらも、今は曖昧じゃなくちゃんと俺を好きでいてくれてる。
これは、そんな俺とさあらの、話。
かのじょのはなしをしよう
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