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静かになった家の中。皆が来るまではこれが普通だったのに、今ではすごく虚無感を感じる。
俺はベッドに腰掛けて、ベガからの手紙を開いた。手紙というより、メモ書きみたいなものだったが。

『点線模様のある人:矢入俊成、棚井康太、波川(はかわ)明、山田富貴、長川侑、馬道一(めどうはじめ)【、高谷浩也(たかたにこうや)、紀家(のりいえ)賢太?】
その他要注意:村瀬美沙、青森早苗、前田雅(みやび)、島 倫太郎、村井守
この人達は、君が高校に入ってからの三年間で、遭遇する可能性が非常に高い要注意人物だ。彼らは決して、敵に回してはいけない。仮に万が一のことがあっても、全力で回避せよ。歯車は既に回り始めている。健闘を祈る。
P.S. その一、カッコ内はイレギュラーらしい。念のため気をつけろ。
その二、矢入俊成の裏に妙な気配がある。要注意。
その三、マーフィーと名乗る殺し屋が接触してくるかもしれない。そいつとは仲良くしといた方がいい』

                     ◆

あれから三年。ミリエラからの連絡は全くなかったが、ベガが用意したリストの中の何人かと接触する機会はあった。
そんなある日、俺は学校で部活を終えて、家に帰ろうと自転車を走らせていた。
けれど、小さな信号のない横断歩道を渡ったところで、直角に走ってきた自転車とぶつかってしまった。
「大丈夫ですか!」
「いてて……大丈夫大丈夫、って……」
見上げてきた顔に、俺は見覚えがあった。
そして、もう一台の自転車が、彼の後ろからやってきた。
「あの、お二人とも大丈夫ですか? って、あれ?」
上野歩真、矢入俊成、そして棚井康太。
絡み合う視線。

俺はそこに、彼女の警告の核心を垣間見た気がした。


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