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◆
「ただいま」
僕、元気は、任務の資料を受け取って、家に戻った。日本の僕達姉弟の家は、アジトも兼ねている。他の三人はどこで暮らしているかって? それは機密情報なので言えないんだ。
リビングの電気が点いている。暴れた彼らが、帰ってきているのだろう。
「おかえりー」
予想通り、その四人。救急箱がテーブルの上にあって、各自手当をしていた。ざっと見た限り、酷くはなさそうだが、少し心配だ。
「そこそこ派手にやったね。一週間後までに治るかな」
「一週間後? 何かあるの?」
聞いてきたのは真樹。真面目な顔をして、思考は一番ゲスだと思う。たとえ、この世界に身を置いている中でも。
「さっきさ、ボスに呼び出されたんだ。最近噂の『壺の国』に行ってほしいってね。資料ももらって来たんだけど」
テーブルの空いたスペースに紙束を投げて、僕はキッチンへ。喉が渇いた。リビングに戻ると、勝手に資料を各自取っていた。そういうところはいいのだけど。
僕も最後の一束を取って、仕事の内容について説明した。
「……という感じなんだけど、質問がある人」
「大ありなんだけど」
姉さんがすぐに右手を挙げた。僕だって色々と突っ込みたいところはあるが、ひとまず皆の質問を聞いておこう。
「どうした」
「一週間後のこの日付、始業式なんだけど」
彼女の背後の壁にかかっていた、猫の写真つきのカレンダーを指す。しまった、すっかり忘れていた。
「あっちゃあ、忘れてた。でも、引き受けちゃったし」
「終わってからでいいんじゃね? 午前中で終わるんだし。部活をサボっちゃえば?」
渉、珍しく頭がキレるね。
「俺、賛成」
「それでいいんじゃない」
阜と真樹が同意した。僕は姉さんの方を見た。
「その手があったね。部活より仕事の方が楽しいし。それに、最近五人全員での仕事してない気がするけど」
言われてみれば、そうだった。マリノから公式に言い渡された仕事は、二人か三人ぐらいでやることが多い。余程の事がなければ、五人全員で動くこともない。
「確かに」
渉がうなずいた。これは全員、意見が一致したということでいいだろう。けがも大丈夫だろう。
「じゃあ、そういうことで。他に質問は」
手は挙がらなかった。
「それでは、四月八日の始業式が終わったあと、ここに集合ね。ご飯は姉さんが用意してくれるから」
「おいお前……まあいいや、適当に弁当かカップ麺でも買ってくるよ」
「Il beneplacito!(了解!)」
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