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同じようなナイフの投げ合い。投げながら避けるというのは、小柄な僕でも意外と難しいと思うものなのだが、ミラとやらは、長身ながら身軽らしく、部屋にある段差を利用したり、ジャンプも交えながら軽く避けて、さらに上空から投げ込んでくる。僕も似たような動きをしてみるが、慣れない動きでは、ナイフの軌道のコントロールがうまく行かない。
あいにく、そのような戦い方をされているので、短時間でさっと仕留めることが多い僕にとっては、ちょっときつい。きちんと見なくとも血まみれだろう。痛みを麻痺させる魔法を事前にすばやくかけておいたので良かったが、その魔法の欠点は、血の流しすぎになかなか気付けないところだ。
一旦間を置かれた。一気に仕留めてもよかったが、話も聞かずにいきなり決闘になったので、半殺しぐらいにして、話を聞き出す方向に持って行くべきだと思ってやめた。
「なかなかやるじゃないか。『リトル・ダンディー』の名は伊達ではなかったか」
傷はある程度付けた。しかし、まだ余力がありそうなところが妙に腹立たしい。これが終わったら、持久力も鍛えないといけないなあ。
「そちらこそ、僕と対等にやりあえるだけの力をお持ちで」
「対等……それは心外ですなあ」
「おや、そうです?」
息を切らしながらも、警戒は怠っていない、そして、まだ戦えるというという意思表示の刃は、ずっとちらつかせる。
「そなたは子供だと聞いておりますが、子供と同じと言われるのは困りますねえ……かといって、容赦をするつもりもありません。ただの子供ではないことは、よく分かっておりますので」
彼の口角が上がったと同時に、自分の後ろから、突然巨大な魔力を感じた。僕は素早く横に避けたが、その気配はついてくる。どんなに動こうとも、ぴたりと一定の距離をとって。しかも魔力があるだけで、どんなものかは視覚では確認できない。タチが悪い。
「遊びはここまでにしましょう。私も暇じゃないんです」
――殺しにかかってるな。
今までの戦闘は、単に僕の体力を削るためのものだったらしい。あるいは、軽い運動のつもりか。まあ、最終手段を持ち出されて、簡単にひるむ僕でもないんだけど。
「バリエラ」
自分の周りに、簡単な魔法で結界を張った。この結界は、いかなる外部からの力や物質―魔法や武器、毒物―も通さないが、酸素も通さないので、長い時間いると酸欠になる。この場ではやや卑怯だろうが、半殺しにするための魔法の用意をしている間にやられるのを防ぐ「作戦」ではある。


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