12



俺達は、二手に分かれることにした。
ユーミンとリッキーが、ゲールがいる可能性のある城の方向へ行き、俺とローリーとジャックは、迷い込んだ人々の捜索と帰還を担当することにした。別に、先にこちらをしてから、もう一つのことをする、のでもよかったが、両方一度にできる能力があるなら、そうしてしまった方がよい、という判断だ。それに、城は恐らく危険だ、一般人だろうジャックを連れて行くのが憚られた、というのもある。
地図を魔法で二枚に増やし、その片方を持って、しらみ潰しに怪しいところを回ろうということになった。
地図は大まかなことしか書かれていない。ここが「海」、ここか「森」、ここが「住宅街」という風に。これではどうにもならないので、とりあえず歩いてみて、不審な場所に適宜立ち入ってみる。しかし、試しに海岸を一通り巡ってみたが、手がかりは見つからなかった。それに、誰にも出会わない。夜はまだ、明ける気配がない。
「まさか、帰れない、ということはないよね」
ジャックが不安がるのも当然だろう。森と、海と、草原と、砂漠と、住宅街と、城。シンプルにそれだけしかない場所に閉じ込められているのだ。住宅街に商店があるのは確認済みだが、誰が営業しているかは分からない。
そして、一番よく分からないのは、この異世界(と言っていいだろう)に人々を迷い込ませている、その目的だ。
「入り口があるなら、普通は出口があるはずだ。壺から入ったから、壺から脱出できる、とか。けれど、壺から誘導、いや、本人の意思とは無関係に誘拐されているから、そう簡単に帰す気もないのかも」
というのは、俺が今、考えたところだ。
「そうだよね、簡単に逃げられたら誘拐の意味がないし」
岩場が見えてきた。確認してみるが、人が入れそうな隙間はなかった。魔法によって入り口が形成されているのはほぼ間違いないので、出口もそうだろうと、常に魔力のレーダーを起動させているが、何も引っかからない。
「空にあったりして。行けないけど」
「俺も行き方知らないよ」
ローリーが言うように、俺達は空を飛ぶ魔法は習得していない。魔法使いの出てくる物語で、空を飛ぶ魔女が出てくるのは定番だろうが、今のところその魔法の必要性を感じていないからだ。いや、でも万が一のために、帰ったら習得した方がいいだろうか。
やがて、砂浜の端に突き当たる。右側の海に、防波堤が伸びていて、その付け根にまた岩場があった。
――ん?
その茶色の岩が多い岩場から、微かな魔力を感じた。何かあるかもしれない。防波堤の上に上がろうとしている二人を呼び止めた。
「ちょっと待った」
「なあに? 何かあった?」
「この岩、怪しい」
左側に回ってみると、人が一人入れるだけの空洞があった。
「あ、入れそう?」
「入ってみるか」
ローリーを先頭に、真ん中にジャック、最後に俺。持ってきていた懐中電灯で照らして、足下に気をつけながら進む。
道は下の方に続いていた。そして、その突き当たりに、周りの茶色い岩とは違う、異様な魔力を放つ黒い岩があった。
「これじゃね?」
ローリーがその岩を手のひらで叩いた。
「それだと思う。魔力で封印されている」
「壊しちゃおうか?」
恐らく、この岩を破壊すれば、何らかのよい効果があるだろう。俺達にとっては、別に難しいことではない。しかし。
「いや、後にしよう」
「え、そうするの」
「今でいいじゃん」
ジャックとローリーがそう言うのに、俺は右手の人差し指を左右に振った。
「仮にこれが出口だとしたら、破壊した瞬間に吸い込まれる可能性がある。それからまた、ここに戻ってくるのは面倒じゃないかな。ローリー、何か書いていないか? 文字とか」
「いや、特に見当たらないけど」
「だったら、その可能性があるよ。一旦引き返そう。それに、救い出すべき人々が見当たらない。この時間だから、住宅街の家々で眠っている可能性もある。それを待った方がいいと思う」
「なーるほど! お前って、頭いいんだな」
「ジャック、おだてても何も出ないよ」
地図に印を付けてから、来た道を引き返す。まだ夜が続いているが、水平線の向こうは、若干白け始めている気がする。
「少し待とう。他の人が現れたら声をかけてみよう」


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