翌朝

「おはようございます、王子様」
「……え?」
 気がつくと、僕はベッドの上だった。あれ、昨日、軽井沢に着いたのは覚えてるけど、その後は……
「お前、飲み過ぎだっつーの。覚えてねーの?」
「……全然」
「ったく……あのな、着いたらもう夜だったから、うちのお気に入りの店に行ったんだよ。君、ボトルワイン三分の二開けたからびびったんだけど」
 それは僕のアルコールの許容量からすると、明らかに飲み過ぎだ。どうしたらそんなに飲めるんだろう。言われてみれば、頭が痛い。でも彼女も三分の一飲んだということだよね、普通にベッドに座ってるし、咳はしてるけど、最近の様子からしたら、元気な方なのかな。
「それで、潰れた君を、タクシーで連れて帰ったんだよ。ま、午前中はゆっくり休んでいいよ、買い出しは夕方でいいし。そうだ、どこか具合は悪くない?」
 頭が痛い、と伝えると、薬を彼女の鞄から出してくれた。ここは二階らしい、水は下に降りて汲んできた。ついでに昨日コンビニで買ったお菓子も。
「さて、お昼どうしようかな……パンでいいかな」
「何でもいいよ。美味しいものなら何でも」
 普段は僕が、彼女に美味しいものを食べさせているけど、ここは彼女の方が、いいものをたくさん知っているはずだ。メニューは彼女に任せよう。時刻は午前九時。
「じゃあ、買ってくる。具合が良くなったら、下に降りていいよ。洗面台とトイレは一階にあるから。あ、キッチンは触らないでね、埃被ってるから。リビングのテーブルの上のものは勝手に食べていいよ」
「分かった。えっと、一人で大丈夫?」
「ここじゃ、不思議と大丈夫なものだよ。近くなら外に出てもいいよ、今日は天気がいい。合鍵渡しておくから」
「うん」
 机の近くにあった引き出しから、鍵が一本。僕の右手の平に置くと、ポケットから出てきた自転車の鍵についた鈴を鳴らしながら、彼女は部屋を出て行った。
「行ってらっしゃい」

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