19

元気と優子はリビングに入り、梨花と俊に向かい合うようにソファに座り、明と洋一のことを話した。
「……と、いうことなんだ」
「そうだったんだ……」
俊が頷く。
「うん、だから二人が戻ってきたら、話してみるつもりなんだ。それともう一つ。君達、僕達のファミリーに入らない?」
「「え、ミルトリーファミリーに?」」
梨花と俊は驚く。
「うん。だってほら、君達これから行くとこないよね。それに、君達には魔力があるし、何より僕達が言ってるんだ」
「でもそれって、私達、マフィアになるんじゃ……」
「大丈夫大丈夫。僕達のファミリー、結構いい人多いよ」
「とは言っても、マフィアって人を殺したりするんだよね。俺達もしないといけないのか?」
二人は困惑した表情になる。
「必ずしないといけない訳じゃないよ。やりたい人はそういう任務に出るし、やりたくなかったら事務やけが人の治療などをする。まあ、非常時は全員戦闘要員だけど」
「じゃあいずれは、誰かを殺さないと……」
「どうしてもって言うなら、その時は僕達が代わってあげるよ。な、姉ちゃん」
「ああ。ま、考えておいて。答えは急がなくていいから」
「「……」」

二人が顔を見合わせたその時、リビングのドアが開いた。
「ただいまー」
「お、ただいま。どうだ、すっきりしたか?」
優子が洋一と明に聞く。
「一応。でも疲れた」
そう言うのは洋一だ。
「え、何で?」
「だってこいつ、何か色々言ってくるのに!」
彼は明を指して言う。
「お前が先に変なこと言うからだろ!」
明が言い返す。
「俺何か言ったか?」
「言っただろ! 『ピ――――(自主規制)』って」
「おーい、伏せ音入ってるよー」
優子が突っ込むが、二人には聞こえていない。
「そ、そ、それは、自然に出てきてしまっただけだって!」
「自然に出てくるって……」
「見た目によらず変態? しかも顔真っ赤」
梨花と俊が引き気味に言う。
「そこ、誤解するな! 俺は純粋だ!」
「でもこいつ、知識は結構あるんだよな。俺もびっくり」
「黙れ明! ていうか誰か、そうだ、優子止めてくれ!」
「無理。もう少しいじられるお前が見たい」
「こいつドSだー!」

「はい、そこまで。早く座ってくれないと困るんだけど」
「!?」

元気の声が、騒がしかった部屋を一気に鎮める。
その手には、鈍い輝きを放つナイフが握られていた。

「す、すいませんでした!」
洋一が潔く謝る。
「ごめん、連れが迷惑かけて」
「お前は黙れ!」
「まあ、落ち着けって」
俊が宥め、二人はようやくソファに腰を下ろした。

それを見て、元気がナイフをしまい、口を開いた。
「本来はもっと騒いでも止めないけど、今回ばかりは重大な話があるから無理矢理止めた。いきなり本題に入っていいか?」
「待った」
優子が真剣な表情で言う。
ふざけていたさっきまでとは大違いだ。
「席順を変えよう。梨花、俊、僕達の両端に来て。この話は洋一と明が主役だから」
名前を呼ばれた二人は立ち上がり、彼女の言う通りに動いた。
「そして洋一と明、端っこにいないで真ん中に寄れ」
彼らは嫌々ソファの真ん中に寄る。
「これでいいか?」
「ああ」

「じゃあ、本題に入る」

「まずは、お互いの正体を暴こうか」

そう言う元気の口元は笑っているが、目が笑っていない。

「!?」
洋一と明が驚く。

「お前、まさか、俺達の本当のことを知ってるのか!」
明が目を見開く。

「知ってるから言ってるじゃないか。『ベルフ・クラン』」

優子が元気と同じ表情で言う。

「!?」

「……なら、俺の事も?」
洋一が恐る恐る聞く。

「もちろんさ、『ロタール・クランド』」

「……っ!」

「じゃあ、僕達の正体、分かる?」

「ああ、分かった、ていうか思い出した」
明、もといベルフが言う。

「俺達の本当の名前を知っている人はそんなにいない。ましてや現代ではな。となると心当たりは二人しかいない」

「優子が『ユーミン』で、元気が『ゲール』だな」

彼ははっきり言った。

「その通り。正確にはユーミン・ミルトリーとゲール・ミルトリー。所属はミルトリファミリー直属暗殺部隊『ブラッディ・ローズ』だ」
元気が言う。

「と、言う訳で。改めて、久しぶりだな、ロタール、ベルフ」

元気と優子、否、ゲールとユーミンは二人に向けて手を差し出した。
ベルフも右手を差し出し、握手をしようとする。
が、ロタールは二人の顔を見て、何か考えている。

「どうした?」

「……ベルフ、この二人がその名前で呼ばれてた時に、俺達、この二人に会ったことあるか?」

「あるよ? 昔、つっても数百年前な。お前の父さんとシチリアに行った時、俺が転んで、その時にこの二人に助けてもらって、それで少し遅れてお前らが来て、お前がユーミンによく分からん本を渡してた、確かそんな感じだったかな」

「あれ、そうだっけ? ……全然記憶にないんだけど」

「「ええっ!?」」

ゲール、ユーミン、ベルフが驚く。
彼らはこの時のことを覚えているからだ。

「じゃ、じゃあ、何で僕達が21世紀にいるのか分かるか?」
ユーミンが聞く。

「……分かんない」

「……なら、君の父さんの名前は?」
今度はゲールが聞く。

「……何だっけ。顔も思い出せない」

「……だったら、私達からも。通ってた小学校の名前は?」
梨花が心配そうな顔で聞く。
俊も同じような顔だ。

「小学校? えっと……忘れた」

「「え……」」

ロタール以外の人が途方に暮れた顔をする。


「ていうかさ、ベルフ」

「何?」


「俺とお前、何で友達で、一緒に住んでるんだろ?」

「っ!?」


ベルフは言葉を失う。


「……何か俺、忘れすぎていうか、覚えてなさすぎだよね。でも、思い出せないんだよな」


「「……」」


「……俺って、記憶喪失かな」

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