13
元気の連絡により、「ブラッディ・ローズ」の5人は、彼と、彼の姉の家に集まっていた。
もちろん、全員黒スーツ姿である。
「状況は分かっているな?」
優子が聞く。
「ああ。しかも指名されたのなら、ますますやる気になるよ」
渉が言う。
「なら、早く行こう。依頼人が待っているかもしれないし」
「俺も、そうしたほうがいいと思う」
真樹と阜も言う。
「じゃあ、扉を開いてもいいか?」
扉の前に立っている元気が聞く。
「Sì!」
4人が答える。
「では開こう。魔法の扉よ、本部の扉と接続せよ!」
周りが光に包まれ、彼らの姿は扉に吸い込まれていった。
◆
「お邪魔します」
本部に着いた彼らは、ボスーーマリノの部屋に入った。
「お、早かったね。ソファを用意したから、早く座ってくれ」
「はい」
彼らはマリノに言われた通り、長いソファに座った。
「で、依頼の詳しい内容は?」
元気ーーゲールが聞く。
「それなんだけどな、もうすぐ依頼人が来る予定だから、彼女から聞いてくれないか? 自分から話したいと言っているから」
「彼女?」
マリノの答えに、優子ーーユーミンが問う。
「そう、君達と同じ中学生の女の子だ。名前は確か……」
「遅れてすいません!!」
「!!」
マリノが依頼人の名前を言おうとした時、部屋の扉が思いっきり開かれた。
そこに居た少女に、その場に居た全員の注意が向けられる。
「えっと、君はもしかして転校生の……」
真樹ーーリッキーが聞く。
「依頼人の白石梨花です。えっと、今日学校で、お会い、してますよね……?」
「あ、ああ……そうだな。でも何で、僕達に暗殺依頼を?」
ゲールが聞く。
やや緊張しているようだ。
「それは、ちょっと……」
彼女は、俯いてしまった。
「話したくなかったら、別に言わなくてもいいよ。それより、座ったら? ずっと立っているのも疲れるだろうし」
渉ーーローリーが言う。
「そうですね。じゃあ、座らせていただきます」
「どうぞ」
彼女は、5人の向かいのソファに座った。
◆
梨花が座ったのを確認すると、ゲールが話を切り出した。
「なら、さっそく本題に入ろうか。暗殺依頼というのは、どんな内容なんだ?」
「はい。実は、私の父を殺して欲しいのです。理由は長くなるんですけど、聞いてもらえますか?」
「ええ、いいですよ。話したいだけ、話してください」
「分かりました。真剣に、聞いてください」
◆
私が生まれた時、家族は5人でした。
祖母と、父と、母と、母の妹と、そして私。
3年後には弟が生まれ、6人家族になりました。
私達は幸せでした。
でも弟が生まれて半年後、悲劇は始まったのです。
一番最初は、祖母でした。
原因は事故死。
自転車で横断歩道を渡っている時に、信号無視をした車とぶつかったのです。
だけどその頃の私は、まだ『死』というものを理解していなかったので、祖母が棺に入れられる理由が分かりませんでした。
2年と半年後。
今度は、母の妹でした。
彼女は重い病気に罹り、手術をしなければならなくなりました。
しかし、手術は失敗。
ようやく『死』というものを理解し、私は泣きじゃくりました。
4年後。
ついに、大好きだった母が亡くなりました。
洗濯物を干している時に、突然倒れたのです。
たまたま学校が休みだった私が急いで救急車を呼び、病院に連れて行ってもらったのですが、間に合いませんでした。
原因は、毒でした。
そして3日前。
弟が友達と一緒に学校から帰っている途中で、車にはねられたのです。
幸いにも、この事故では誰も死にませんでした。
でも弟だけは、まだ目を覚ましていません。
私は、この事故の起きた夜から、夢を見るようになりました。
祖母が死んだ事故の夢から、弟の事故の夢まで。
その中には、自分が実際には見たことがないものもありました。
しかも、その夢には共通点がありました。
祖母と弟の事故では車の運転手、母の妹の手術では執刀医の助手、母の死では朝食に毒を盛った人。
それらがすべて、父でした。
だけど、所詮は夢の話。
本当に父がやったのかどうかは、分かりません。
でも、父は実際に車を運転し、医者でもあります。
毒を扱うことも、あるのかもしれません。
ですから、まずこれらの事件の犯人を調べてください。
そして犯人が父だったら、父を殺してください。
もし違っていたら、真犯人を殺してください。
報酬?
何万円でも、払う準備は出来ています。
父の口座から。
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