弐
お手伝いとして住み込むようになって、数ヶ月が過ぎだいぶ慣れてきた。
(相変わらず竹田さんはちょっと怖いし、西園寺さんとは全然会わないけど…)
台所に立っていると呼び鈴が鳴った。
「はーい」
玄関に向かい戸を開けると宅配の男性だった。
「こちらにサインをお願いします」
「いつもありがとうございます」
にこやかに男性からペンを借りようと手を伸ばすと軽く指先が触れた。
「すみませ…っんん」
言い終わる前に強引に口を塞がれた。
「ちょっ、やめてください!」
和服のあわせから手を這わせられ胸を撫でられた。抵抗しようとするも膝を脚の間に差し込まれ微弱ながら刺激を送られる。
「んっ」
力が抜けて男性にもたれると首に舌を這わせられ身体が徐々に熱を帯びてきた。
「いい匂い…ねえ…食べていいですか」
「やっやめっんん」
しきりに首筋を舐められ、匂いを嗅がれ意識がぼんやりしてくる。
「あっあっあっ」
緩く主張していたものを下着越しに手で撫でられ声が出てしまう。
(やば…気持ちいい…)
腰が勝手に揺れる。
「おい」
外から聞き覚えのある低い声が聞こえてきた。
「そいつは俺のだ」
いきなり視界が反転し、気がつくと抱えられ胸の中にいた。
見上げると眉間に深くしわを寄せた西園寺だった。
「…っ」
宅配の男性は苦虫を潰したような顔で軽く睨むと玄関から立ち去っていった。
抑制剤を飲まされ布団に寝かされた。
相変わらず眉間のしわは刻まれたまま険しい表情の西園寺に自分がしてしまった事の重大さに心が潰されそうになる。
(…クビだよな…絶対)
一度も口を開かない西園寺を伺いながら、必死にどう謝罪しようか考えていると電話が鳴った。
「……そうか」
電話を切るとこちらに向き直った西園寺の表情は先程よりも和らいでいた。
「身体はどうだ」
「あ…えっと平気です」
「速効性のある抑制剤だからな、効いてよかった」
「西園寺さん…」
「どうした」
「あんなことしてしまいすみませんでした、反省しています…あの…これからは気をつけるのでどうかクビにだけは…」
「クビにはしない」
頭を優しく撫でられ心臓が跳ねた。
「その代わり俺の言うことを1つ聞いてもらう」
「はい、もちろんです」
身体を起こして西園寺にきちんと向き合うとふっと微笑まれた。
「俺のものになれ」
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