ミルクティー

ストレートをいつも買うはずの拓真の目の前になぜそれが置いてあるのかというと、
いつも隣にいるはずのあいつの好物もつい購買で一緒に買ってしまったからで。

「…たまにはいいか」

自分では買わないミルクティーを開けてひとくち飲んでみると、
ふわりと広がる紅茶の香りは悪くないが、やはり甘すぎる。

そして同時に思い浮かんだ昨日の出来事に拓真は顔をしかめた。

「…最悪」

いきなり掴まれた腕に泣きそうな顔、そして
『拓真…好きだ』

「うわあああああああ!」

思わず叫んでしまいとっさに両手で口を塞ぐが、幸い放課後の教室には他に誰もおらずほっと胸を撫で下ろす。

確かに、あいつは顔もカッコいいほうだし
性格もおちゃらけ野郎で適当なところはあるが、
本当に困ったときは助けてくれる頼もしいやつだった。
幼い頃からの親友であり、いつも隣にいた。

「はあ」

飲み干したミルクティーをゴミ箱に捨て、そろそろ帰るかと教室を出た。

「どうすっかな…うわっ!」

悶々と考えていたせいで前に人がいるのに気がつかなかった拓真は思いっきりぶつかってしまった。

慌てて謝ろうと顔を上げると、
昨日から拓真を悩ませ続けているあいつが目の前にいた。

「あ…えっと、宗介…」
「お、拓真じゃん!今帰りか?」

気まずそうに声をかけた拓真だったが、予想よりも明るい声にポカーンと口を開けた。

「なんだよその顔」
「え、いや…」
「下駄箱行ったら、靴まだあったから一緒に帰ろうかと思ってさ」

ちょうど会えたし良かったわといつもと変わらぬ笑顔で話す宗介に、
あれこれ悩んでいる自分が馬鹿みたいに思えてきた。

「にしても何でまだ残ってたんだ?確か今日部活休みだったよな?」
「うーん…ちょっと考え事してたからさー」

ふと宗介が立ち止まったのを不思議に思い、拓真も歩みを止めて振り返る。

「宗介?」
「…考え事ってもしかして…俺が昨日好きだって言ったこと?」

好きという単語に身体がびくりと反応してしまい、思わず目をそらす。

「ちょっとは意識してくれたんだ」
「…なんで俺なんだよ」
「拓真だからだよ」

さらりと当然のように言われてしまい身体がじわりと熱くなるのを感じる。
クスクス笑っている声が聞こえた。

「ほんと可愛い」

赤くなった顔を見せたくないと俯いていると慣れているはずの大きな手が拓真の髪を優しく撫でた。

「…昨日の返事は…その…」
「あー保留にしといて!」

ぱっと顔を上げると宗介はにこりと微笑んだ。

「ちゃんと好きになってもらうから」


…これだから甘ったるいのは苦手だ。

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