今の貴方へ | ナノ




未来の君へ続き



「子供扱い、すんなって言ってんだろ」

鼻と鼻が触れる距離。
かかる息に、臨也は身を捩った。
閉じられた瞳に、ふるりと震えるまつ毛。
静雄は軽くはだけ、露出した臨也の白い肌に息を飲んだ。
首筋から座骨にかけてのしなやかなライン、その白さに目を細めた。

「シズ、ちゃん。どいて」
とん、と軽く押される胸板。ね、と微笑みを溢し言った臨也の余裕に少し苛立った。

「臨也、」

未だに子供扱いされている。未だに男として見られていないのか。
細い腕を掴むと、不思議そうな瞳が静雄を映した。

「すき、だ」

たった二文字のそれに声が震えた。情けない。
臨也の綺麗な赤い瞳は見開かれたが、それは一瞬にして笑みへと変わる。

「うん。」

知ってる。と続ける口に静雄はそっと近づいて、触れるようなキスをした。

「…顔、真っ赤だよ」
「うっ、せ…!」

自分から仕掛けたくせに湯気が出るのではと言わんばかりに顔を赤くし視線を游がせる静雄の反応に、可愛いなぁと言うと可愛いとか言うなと真っ赤な顔で睨まれた。
漸く静雄は臨也の上から退き、とすんと上半身を起こした臨也の隣に腰を下ろす。


「別にね、子供扱いしてるからあんな本を貸してる訳じゃないんだ。俺の持ってる本は哲学のとか心理学の本とか、そんなんばっかりだから。…だから、ね」


ふ、と瞳を伏せて恥ずかしそうに少し頬を赤らめ臨也は口を開いた。

「シズちゃんのために、買ってきてたんだよ」

肩からずり落ちた着流しを整え呟く臨也に静雄は目を丸くする。
俺の、ために――…?


「中学生には妥当だと思ったけどなあ」


では、あの言葉は。
あの言葉は、己をバカにしたものではなく、


「俺にはシズちゃんぐらいの子が、どんな本を読むのかわからなくてさ」


自身が小説家だというのに、本屋で陳列する多くの本に四苦八苦しながら選んでいたと言うのだろうか。

(俺が読むのに妥当だと思って選んでくれ、た)


隣に寄り添う形で座る臨也にどきりと心臓が高鳴り、静雄は身体を強ばらせた。
まただ。どくんどくんと心臓がうるさい。

「臨也、」
「なに?」
「ちゃんと、読むな。…俺のために、買ってくれて、ありが、とう」

膝を握る手に力が入る。
指が白くなって、制服にシワができた。

「すげえ、嬉しい…」

俯いたまま顔を上げられないのは、さらに顔が赤くなっているのが静雄自身が気がついているからだ。
シズちゃん、と透き通る声が特有のあだ名を呼ぶ。
振り返った瞬間に、また唇に触れた温かなもの。

「い、ざ」
「…でも、もうシズちゃんも子供じゃないんだよね」

懐かしむような切ない表情。
手を伸ばさなくても、届く距離にあるそれは酷く遠くに感じた。

「今の俺じゃ、ダメかよ」
「え、……、ん」

こちらを向かせたくて、臨也の顎に指をからめ固定する。
今度は触れるような軽いキスではなく、唇を割って臨也の舌を捕まえた。

「ん、…ぁ、ふ…」

技術も知識も無いが、臨也の反応に突き動かされ舌を使い翻弄していく。
臨也も次第に舌を絡め答え始めた。荒い息とぴちゃぴちゃ、という水音。赤くなる頬に揺れる瞳。


「は…」


唇から離れたかと思った矢先、静雄は臨也の白い首筋に食らい付き、舌を這わせた。
ねっとりとした感覚に臨也は肩を震わせ反射的に静雄の押し退けようとしてしまう。

「嫌、かよ。臨、」

ぱしん、と口を両手で塞がれ臨也と呼ぶのを遮られた。
もがもがと抵抗を見せるが臨也は手を外すつもりは無いようだった。


「……続きは高校生になってから、ね」


告げられたお預け宣言に絶句しながら、静雄は肩を落とした。

静雄はあと数ヶ月あるお預け期間をどう過ごせばいいのだろうかと頭を抱えたが、心の準備がまだだから、と聞こえないのではと思う程に小さな声で告げられた言葉に大人しくあとの数ヶ月を耐えられるかが不安になったのだった。



(どうぞ、よろしく)


(20100929)

10万打突破アンケートにて続編を〜とコメントを頂きましたので書いてみました^^
微裏までいけなかったのでそれは静雄が高校生ver.で!
需要があれば続きますが、きっと続きません(笑)

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