未来の君へ | ナノ



※中学生静雄×小説家臨也



ピンポーンと電子音が響いて、臨也は重たい瞼を擦った。

(ああ、また…)
シズちゃん、来たのかな。

ゆっくりとした動きで立ち上がり、少しはだけた着流しを整える。
ふと時計を見ると長い針は6の数字を指していてカーテンから漏れる光は薄暗かった。
朝から原稿と向き合っていた気がするが、こんなにも時間がたっていたとは。
臨也は書きかけの原稿を適当にかき集めて机に放置した。
そして玄関まで出ていくと頭が派手な学ランを着た少年が立っていた。

「いらっしゃい、シズちゃん」

臨也が微笑むと、シズちゃんと呼ばれた少年は恥ずかしそうに視線を外し、おう、と顔を赤らめ呟いた。


***


「今日は朝から学校行ったの?」

臨也はソファーに腰をついた少年――平和島静雄にジュースを渡す。
このオレンジジュースも静雄のためにいつも臨也が買っておく、静雄専用オレンジジュースだ。

「手前が行けって言ったんだろ……、一時間目、国語だったし」

静雄はジュースを受け取りながら、口を尖らせ面倒くさそうに答えた。
コップに口をつけ、ガブガブとジュースを一気飲みをしたかと思うと、あ、と静雄は間抜けた声を上げ、学生鞄の中で何かを探し始める。

「これ、」
「ああ、全部読んだんだ」
「俺、別にファンタジー好きじゃねえよ。自分が本の中に入っちまうってのは面白かったけど、俺が読みたいのは……」
「中学生には妥当だと思ったけどなあ」

臨也は静雄の言葉に重ねて言葉を紡ぐ。

「手前が書いた本が読みてえんだよ」

ムッとした顔の静雄をチラリと見て、臨也はまだ君に早いよと目を伏せた。
臨也は静雄から返された本を、壁に備え付けられた本棚返す。
それと同時に並べられた大量の本の背表紙につつ…、と指でなぞってタイトルを流し見していく。
ある本に目がいったとき、臨也は手を止め表紙を確認した。

「あ、はい、これ。おすすめ」

静雄に差し出した本の表紙にはデフォルメされた少年の絵が描かれた、ファンタジー小説だった。
それを見た静雄はギロリと臨也を睨み付ける。
そんな静雄の反応をクスリと笑いながら

「中学生には妥当だと、」

思うよ。
そう先ほどと同じ言葉を少しからかうようにかけようとした時。
伸ばした手を、本をすり抜け静雄に腕を掴まれた。

「わっ…」

そのままの力で静雄は臨也の腕を引き寄せる。
ドサリと音を立てて静雄は臨也をソファーに押し倒した。


「シズ、っ……」
「子供扱い、すんなよ」


馬乗り状態になった静雄は息が当たる程の近さにある臨也に向けて、真剣な声色で告げた。
押し倒した反動ではだけた着流しに思わずドキリと胸を高鳴らせるが、ここで取り乱してはまたこの男にバカにされるのだ、と必死に理性をかき集める。

そんな静雄の心の葛藤を知ってか知らずか、臨也は堪えられないと言わんばかりに中途半端に隠した笑い声を漏らした。

「なにっ、」

笑ってやがんだ!と静雄が声を上げようとした時、臨也はそっと静雄の頬に触れる。

「声、低くなったよね。身長だって全然伸びたよね。………もう、中学生、だもんね」

頬に触れていた手を静雄の首に回し、静雄の顔を抱き寄せる。


「シズちゃん、」


耳元で発せられる好きな人の甘い声に、どくんどくんと心臓がうるさいんだ、と静雄は熱くなる顔を必死に隠した。

「早く、大人になって」



(ずっと、待ってるよ)



(20100605)

睦月 様リクエスト
中学生静雄×小説家人臨也

甘い話が全力で苦手な私が必死になって「甘」を探し求めた結果がこれ、です…!
甘い、のでしょうか…!(聞くな)
すごく素敵な設定を頂いたくせに生かせていないのが本当に力不足orz
とりあえず小説家は着流し着てる設定に萌えます、私が(どーん)

臨也さんが官能小説家だからまだ君には早いよって言ってたら面白いな^///^と勝手に妄想してました\(^o^)/パーン

本当に本当に素敵なリクエストありがとうございました!
これからも等サイトをよろしくお願い致します!

あ!リテイクは常に受け付けております故…!


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