一生君とそこにいて、(前) | ナノ




※拍手連載の続きのような感じ



一生君とそこにいて、




 卒業式を迎え、その行事は笑顔で終わった。
 個名を呼ばれ、立ち上がる。代表者が証書を受けとり、保護者会会長の挨拶や校長による最後の話。
 そうして長く短い卒業式は終わった。

 卒業式が終われば、次にくるのは卒業旅行。
 行き先は大阪。夜行バスで出発し、初日は大型遊園地で大いにはしゃいだ。
 ホテルは安上がりに心斎橋駅近くのホテルを予約し、ツインの部屋を二部屋借りると必然的に静雄と臨也は同じ部屋に押し込まれていた。


「はあー! 疲れた!」


 ボスンッとベッドに仰向けになる形で飛び込めば、柔らかなシーツが身体を包んだ。臨也はそのまま横になると、大きな欠伸を洩らす。少し大きな荷物をベッドの横に下ろし、静雄もベッドに腰を落ち着かせた。
 夜行バスからの遊園地というハードスケジュールのためか身体が重い。静雄も瞼を擦り、欠伸を洩らすと臨也は欠伸が移ったね、と笑った。


「シャワー浴びてこいよ。疲れてんだろ」
「んー…面倒だけどこのまま寝るのも嫌だしね。はいってくる」


 キャリーを開け、下着類を取り出すと臨也は欠伸を噛み殺しながら洗面所へと消えた。しばらくすると水の音が聞こえ出し、静雄は少し、ほんの少し視線を泳がせた。

 頭の上で腕を組ながら、そのままベッドに沈む。丁度良い柔らかさだ。
 ふんわりとしたオレンジ色の光と、ベージュの天井。隣を見れば、臨也のベッドがある。
 思えば、臨也と部屋で二人っきりになったのは初めてかもしれない。
 静雄はふとそんな事を考えた。
 卒業式前日に告白し、付き合いだしたがそれから卒業旅行までの日にちが無く、個人的に家に招く事ができなかったのだ。シャァアっと響く水の音に臨也が居る事を実感する。意識しないようにしようと体を横にし、ゆっくりと目を閉じた。



 ほかほかと湯気をだして臨也は浴衣に着替えると、濡れた髪の毛を拭いながら洗面所から出る。静かすぎる部屋に首を傾げながら、ベッドに横たわる静雄に声をかけるが何の反応も無かった。


「……シズちゃん?」


 窓の方を向いて動かない静雄に何度か呼び掛けるがやはり反応が無い。顔を覗き込んでみると、閉じられた瞼。すーすー、と一定リズムの寝息が聞こえてきた。


「……寝てる」


 整った顔立ち。金色の傷んだ髪。震える睫毛。
 かっこいい。


「シズちゃん」


 そっと名前を呼んでも反応のない静雄に臨也はクスリと笑みを浮かべながら、しばらくその表情を眺めた。
 遊園地では腕を引かれ、こっそりと手を繋いだ。ジェットコースターは隣に座り、キャラメルポップコーンを二人で食べた。
 新羅は終始臨也と静雄のやり取りを見ながらニヤニヤと笑みを溢す。それを門田がやめろと苦笑いを浮かべつつも新羅を止めていた。
 

「シズちゃん」


 楽しかったなあ、と今日一日を振りえる。シズちゃんとあんなに普通の接したの初めてじゃない?
 臨也は静雄の寝顔を眺め、ふと立ち上がる。起こさないように金髪を撫でると二人だけの部屋を見渡し、そっと頬にキスを落とした。


「なん、ちゃって」


 静雄が寝ていなければ絶対にしない。あはは、と乾いた笑いが部屋に空しく響き、臨也は再度二人しか居ない部屋を見わたした。
 我ながら恥ずかしい事をした。
 臨也は首にかけていたタオルを握り締めぎゅっと目を瞑った。


「手前、なんて事してんだ…、」


 ふと静かな部屋に響いた、声。
 恐る恐る臨也は視線を下に向けると、顔を微かに染める静雄と目があった。


「起き、てたんだ」
「今ので起きた、んだよ」
「へ、え…そっか」
「お、う」


 流れる静寂と、微妙な空気に二人して視線を泳がせる。静雄は耐え切れずあーっと声を出したかと思うと、臨也もまたお風呂入ってきなよ! と声を上げた。だが静雄は臨也の腕をとるとそのまま引き寄せ、自身の腕の中へとおさめた。


「なあ、俺からもしていいか」


 耳にかかる息。少し汗ばんだ静雄の匂いに臨也は息が止まるのを感じながらゆっくりと頷く。
 そして、落ちてくるキスにきつく目を閉じた。





(20110404)

清羅さまリクエスト
「シズイザ恋人設定で甘甘旅行」
続きます!次はR18予定です。


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