君の瞳は何を視る | ナノ



※続きます
※本格的な裏は次回




池袋に立つ大型アニメ関連商品の販売店。7階まであるそのビルの脇にワゴンを停め、ワゴンの持ち主である渡草、疾風の如く駆け込んで行った狩沢、後を追うように駆け出した遊馬崎を見届け、門田はやっと静かになったと息をついた。

ワゴンに寄りかかりながら単行本を開く。さあ続きを読もうか。すう、と世界に入り込もうかと息を吐いた、その時だ。


「ドッ、タチン!」


とんっ、と肩を優しく叩かれ視線を上げる。ふわりとコートを翻し、現れたのは折原臨也だった。はあはあ、と軽く息を乱し膝に手をついた。その様子に、ああ、また静雄かと胸のどこかがチクリと痛んだ。


「匿って匿って!」
「ああ、わかったわかった。」


相変わらず追いかけっこでもしたのだろう。持ち主である渡草へは無断だが門田はガラッと扉を開け臨也に中に入るように促す。臨也はありがとうドタチン! と喜びを露にして飛び付いた。門田はいいから入れよ、と臨也の黒髪をポンポンと叩いた。


「本当、シズちゃんも暇だよねえ。」
「そうだな。」
「運良くドタチンに会ったけど、こんなとこで何してんの?」
「まあ、留守番ってとこだな。」
「……相変わらず優しいんだね、ドタチンは。」
「なんだよ、突然。」


人を中に入れておいて自身が外に居るのは気がひける。門田もワゴンに乗り込み、いつも狩沢と遊馬崎が座る後ろのシートに2人で腰をついた。
はあー、と臨也は大きなため息を溢し、シートに寄りかかる。何故か暗い顔の臨也に門田は眉を寄せた。


「静雄と、何かあったのか?」
「何で、そう思うの?」
「なんとなく、だな。」


臨也に色んな表情を表に出させているのは、いつだって平和島静雄だった。憎たらしい笑みだけではなく、腹の底から笑っていたり、悔しそうな顔をするのも静雄の前だけだ。門田はチラリと隣に座る臨也の表情を盗み見る。どこかしゅんと肩を落としているように見える臨也に、そんな表情をさせたであろう静雄に嫉妬心を抱いた。


「………もう静雄も帰った頃じゃないか?」


自分の考えてに背を向けるように静雄の名前を出す。扉を開けようと手をかけたその手のひらを、臨也が止める。どうした? 門田が優しい声色で聞くと、そのまま手を握られた。




「シようよ、ドタチン。」



何をするのかは聞かずとして知れている。門田と臨也は所謂セックスフレンド、セフレと言われる関係だ。シよう、というのはイコール、セックスである。何かをせがむように門田の手を取り身長差から見上げられる形になる臨也に、門田はくらりとする頭を抱えた。


「車の中だぞ、」
「わかってるよ。」


――…外から見えないし、良いじゃん。
中から外は見えるが明るい外からは中の様子が良く見えないようになっている窓。建物脇で人影も少ないが、いつ狩沢達が帰ってくるかもわからない。そしてこの車は渡草のワゴンだ。汚す訳にはいかない。
駄目だ、と門田が首を振ろうとした時、視界に入る擦り傷があった。静雄につけられたのであろうその傷に、腹の中にざわりと黒い影が這った。


(俺も、嫉妬深かったんだな。)


――……セフレだってのにさ。
自嘲するように言った言葉にくしゃりと顔を一瞬歪ませた門田だったが、その傷を舐め上げ、唇にたどり着く。ただ触れるだけのキス。ちゅ、ちゅ、と音を立て上唇から下唇を吸い上げ中に舌を忍び込ませた。


「ふ、…んっ…、」


鼻に抜ける臨也の息。固く閉ざされた赤い瞳は誰を思っているのだろうか。


「ドタチ、…もっと激しく、して、」


――…激しく、か。
キスだけで潤んだ瞳にほだされ、門田は臨也のインナーをたくしあげ、ベルトを外し始める。

激しくして欲しいのは、俺が静雄の代わりだからか?

セフレの関係にあるのだから相手が誰を思い抱かれようが関係がない。聞ける筈の無いそのセリフを飲み込み、門田は露になる突起を口に含んだ。ひっ、と小さな臨也の悲鳴を聞きながら揺れる車の中で2人は世界に溺れていった。




(20110111)

続きます!→後編
今回はドタチンのターン


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