置いていかないで

ASネタバレ注意
エンディング捏造注意











藍が消えてから、何ヶ月かが立った。

あれからの私たちは、何事もなかったように毎日を過ごしていた。

私たち、と言ったけど、私は少し違う。





藍がいない日々は、悲しく、辛く、
何かが足りない気がして、寂しかった。







「愁、社長が呼んでるぜ」




部屋に帰ると翔が居て、慌てた様子でそう伝えられた。
2時間くらい前に社長に伝えられて、今伝えたかららしい。

携帯で言ってくれればよかったのに…なんて言ったら、
お前電源入ってないじゃねぇかと怒られた…






とにかく私は急いで社長の元へ向かった。
出来るだけ走ったけど、きっと怒ってるだろうなーなんて思いながらノックをする。



「失礼しまーす…」

「遅いデース!もう待ちくたびれマシター!」

「すっ、すいません!!」

「とりあえず座れ」




急に真剣な声になり、
部屋にピリッとした空気が流れる。
私は静かに座った。




「お前を呼び出した理由はコレだ。」

「…これは、」




差し出されたのは楽譜。
私と藍の最期の曲。




「これを聴いた何十社という会社から、この曲を使いたい、他の曲を作ってほしい、という依頼が殺到している」

「こ…これは、藍の…藍と私の最後の曲で…!」





誰にもわたさず、残しておきたい





そういうと、社長はニヤリと笑った。





「そういうと思ってマシター!」

「えっ?」

「つまり、Mr.ミカゼがいれば問題ないわけデスネー?」

「…藍は、もういないんです」





少し怒ってそういうと、
社長はまたHAHAHAと笑った。





「今日はもういいデース!明日また呼びマース!その時までに、曲を使うか使わないか、気持ちを決めと居てくだサーイ!」





そういって追い出された社長室。


気持ちを決める?




藍が歌わない藍の曲なんて、




私は渡された楽譜をぎゅっと握りしめた。






今度こそ部屋に戻った。
そこにはいつもと同じ部屋。

食欲がなかったわたしはお風呂に入って、ソファに座った。




ふと、楽譜を見て曲をかける
藍と2人で作った曲、思い出の曲、私の宝物…



藍の歌声は優しくて、切なくて、私が好きな藍は歌…




「寂しいよ、藍っ…」





涙を流すと曲は終り、また部屋に静寂が流れる。


涙は止まらなくて、止まらなくて、


目をめいいっぱい擦った。








「擦ったら腫れるよって言ったでしょ?」




背後から藍の声がしたと思ったら、
ぎゅっと、首まわりを抱き締められた。



「ふ、マヌケ面。」




後ろを振り向くと、やっぱり藍で、
恐る恐る触ってみると、あの頃と変わりなくて、




「あ…い?」

「なに?」




目の前にいるのは、紛れもない藍で
夢じゃないかと頬をつねると痛くて




私は泣き崩れた。





「ちょっと、泣かないでよ。」

「なんっで、ぁ、藍がぁっ…!」

「ほら、こっち向いて」

「っ、」




頭を掴まれ、藍の方を向かされる


無表情だった藍は、フッと眉を下げて笑った。




「おかえり、は言ってくれないの?愁」




また涙がポロポロでて、
それを隠すように藍に抱きついた





「おかえりなさいっ…!藍!」

「うん、ただいま…」












少し落ち着き、2人でソファに座った。
ご飯を食べていないと言ったら、
藍が適当に作ってくれた。




「…社長がなんであんなこと言ったのかわかった…」

「ああ、仕事の話?」

「…なんで藍は戻ってくれたの?」

「博士がね、ボディとシステムを新しくしてくれたんだ。よく、自分でもわかないんだけど、僕の中の記録が…また君と一緒に居たいって…それで博士が記録を元に…また…」



そこまで言うと藍は眉間にシワをよせた

藍にわからないんだ、私に説明したってわからないはず。



「藍がいない間、ぽっかり穴が空いて、寂しくて、泣きたかった」

「愁…」




「でも今は側にいる」

「うん、これからは君と一緒に居たい」




「藍、」

「なに?」


「大好きだよ!」

「僕も、だよ」




ただいま
君にずっと会いたかった








アイアイまじ素敵過ぎて…



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