三人の貴方

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「なんだ、それはーーーーーー!!!」



雨が鬱陶しい時期のある日の朝、静かだった長州藩邸の一部屋から、この藩邸の主の叫び声が響いた。


***

大きな叫び声を聞いた時、私は朝餉を作るために炊事場へ向かっていた。
しかし、どうしてもあの叫び声をスルーすることはできなかったので、大声のした高杉さんの部屋の方に足を向けた。

目的の部屋に近づくと、小五郎さんと興奮気味の高杉さんの話し声がする。

「失礼します。蘇芳です。入ってもいいですか?」

「おう、蘇芳か。入れ。だが、すぐに襖を閉めろよ」

「?? はい、失礼します」


襖をあけて部屋の中に目をやるととてもじゃないけど信じられない光景が広がっていた。
きちんとした正座でいつも美しい佇まいの自分の恋人が座っていたのだけれども…


「こ、小五郎さんが三人???」


そう、小五郎さんが三人その部屋の真ん中に座っていたのだ。





***

「ど、ど、どうしたんですか!?これ!!」

「おはよう。今朝、目が覚めたらね、こんな状況だったんだよ」

もはやパニック状態といってもいい私に淡々とした口調で答えてくれる小五郎さんはいつもの彼と変わりはない。
その彼の左右に全く同じ顔をした人が居て「うんうん」と頷いている事以外は。


「なんでそう、お前は落ち着きを払っていられるんだ!」

「そうですよ!どうしてそんなことになったんですか!」

「いや、朝から色々と考えているんだけどね、まぁ、事実は事実として受け入れるとして、色々と支障が出るだろうから晋作に話しておこうと部屋にきたんだが…先ほどのあの大声だよ。全く」

「そんなの驚くに決まってるだろうが!」

「しかし、私はもう事実として受け入れたよ。さて、報告も終わった事だし、朝餉でも作るか」

その声に別の桂さんが「そうだね」と答え、もう一人の桂さんが「今日の味噌汁は何にしようか」と思案顔をしながら三人同時に立ち上がった。


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