7.けれども想いは届かない

7.けれども想いは届かない

俺が部屋で雑誌を読んでたら、ドスドス足音を鳴らして誰かが帰ってきた。スパーンと小気味良い音を鳴らしてふすまを開く音がしたのでチラリとそちらを見ると、真っ赤に怒ったトド松の姿があった。へらっと片手をあげて、返事をするとあーあー誰だートド松泣かしたの。と一人心の中で思うが、恐らくおそ松だろうと考える。トド松が泣くのは大体おそ松関連だって俺は知ってる。

「あか松兄さん…」
「おそまつかー?」
「みんな…」

仕方ないやつだなー。なにしたの。バイト先に来て。あー想像がだいたい出来た。
末っ子故か一番いじられるし、虐められることがよくあるのは昔からだ。俺がなに言っても五人は変わらないので、俺がトド松を宥める方がはやいし、俺が全員にやりかえすのが一番手っ取り早い。めんどくさいことはタッタカ片付けて終うたちの俺なので、まぁ、報復としてよくトド松が俺を使うのだが。内容によって手を貸す事を全員知っている。経験則ってやつだな。
ため息ついて、話を聞くとあきらかにあいつらが悪いことが判断できた、仕方ないやつらだなー。と言いつつ重たい腰を上げると、あか松兄さんありがとー!好き!とか言うので、男はお断りだと返しておく。液晶向こうの嫁に悪いだろうが。寄って来んな。と制止ながらあれやこれやとトド松と話をする。主に報復内容だったが、落ち着いてきた頃にトド松は話をすり替え出した。

「ねえあか松兄さん。」
「なんだよ、」

何年も気になったんだけれど、どうしてあか松兄さんは、そうしていつも僕たちの影に隠れようとするの?アヒル口を意識したちょっと尖った口がそう言ったのらりくらりと交わしていたが、家には俺とトド松しかいないのだ。交わせないか。小さくため息をついて、俺は席を立つために立ち上がる。立ち上がってトド松を見下ろせば、ちょっとびびった様子はあったが、それでも俺を諭そうとして口を引き締めていた。

「隠れようとしてるかな?」
「してるよ、いつもおそ松兄さんが前に出そうとしてるのに逃げて、僕たち兄弟なのに並んでないのは嫌だよ」

カラ松兄さんがいつも心配してるし、チョロ松兄さんだって口ではああだけどさ!一松兄さんがずっと気にかけてるし、十四松兄さんは十四松兄さんなりに気にしてるんだって、どうして兄さんは解ってくれないのさ。
嫌ったって、俺とお前は違うじゃん。別の人間であって、お前は俺でもないじゃんか。お前らがどう思って俺と接してるかは知らないし、俺も知るつもりもない。俺はお前たちが前を見て歩いてるのが好きだった。肩を組みながら支えあって笑っている姿が。それを見るために俺は下がってるんだよ。なんて口が裂けても言えないので俺の願いは思いは今日も今日とて届かないのだ。
ため息一つ下に降りる。とだけ伝えて俺は席を後にし後ろ手で襖を閉めた。


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