ケーキがうまいか眠れなかった。朝になろうとしてたから、朝飯を作った。確か今日の担当はイルーゾォだが、まぁ。いっか。面倒くさがり、ただし推定の、ギアッチョなら手放しで喜んでそうだが。 野菜を千切り、溶かしたバターで卵を焼いて、続いて卵。味噌汁最近飲んでないなーと思えど、日本からはるばる離れたイタリアに味噌やら出汁やら昆布やら置いてるハズがないのだ、帰った後のご褒美ポジションが味噌汁なんて、安い女だな私。 ハムを薄く切って焼いたパンに切り目を入れて先ほど焼いた卵をねじ込む。その作業を繰り返し、人数分(大食漢はうちに居ないはず)を作り上げて更にまとめ上げて、一人三切れ。とメモを書いて自分の分を盛る。 頂きます。と手を合わせ食べといたら、ホルマジオが現れた。 「寝てねーのかよペスカ。」 「なんか寝たら派遣に間に合わなさそうだったしね。ホルマジオ、今日当番だった?」 「いや。昨日の酒がよ。安い酒だったからなぁ、頭が痛ェ。」 「スープ作ろうか?」 二日酔いにはしじみだっけ。イタリアにシジミはないから、代用もないので適当に作るが。頼むと言われて台所に滑り込み、鍋に水とトマトを放り込み鍋に火をかけて、席に座る。 「なぁペスカ」 「なによ」 「派遣、怪我すんじゃあねーぞ」 パクパク食べていた手を止めて、ホルマジオを見つめる。えらく真剣な顔つきで、こっちが萎縮しちゃうような目つきは仕事中みたいな雰囲気も感じる。 「傷はある程度あるかもしれないけれど、この間みたいなことにはならないわよ。」 「ならいいんだけどよ」 「リゾットに聞いたから、まだ怪我はしにくい派遣先よ。」 玄関蹴り破って帰ってくるから覚悟しなさいよ。とケラケラ笑ってたら、トントンと階段を降りる音が聞こえてギアッチョが現れた。目の下にクマを作ってるのを見ると徹夜したんだろう。 「おはよう。朝ご飯あるけど、要る?」 「ん、はよ。」 「なんだよ、二人して気色悪ぃ。ペスカ、飯くれ」 「はいはい。」 スープ用のトマトを見に行くついでにギアッチョ用の朝飯を大皿から引っこ抜き鍋のトマトを潰してスープ用にと作り替えて味を整えて具材を追加で足して、人数分の珈琲を作り上げて、並べていたら匂いにつられてメローネが背後から襲ってきた。 「ペスカ、俺に食べさせてー」 「一斤詰め込んでやろうかメローネ。」 勿体無いからそんなことしないが。私ならやりかねない。と判断したのか、私の食べかけを奪いサンドはメローネの胃の中に。 「旨い。ペスカならいいマードレになるよ!」 「奥さんすっ飛ばしてマードレかよ。」 「ぐべっ」 「沈めメローネ。」 メローネの分を奪い胃の中に収めて、スープを作り終わらせて、マグに注ぎホルマジオに提出し、スープの残骸を処理する。グイッと底の固まりを胃に流して鍋を洗い、リビングに戻るために踵を返す。 「ペスカ、待ってるから早く帰ってこいよな。」 「…地に伏せっぱなしのメローネのくせにいいこと言いやがって。」 最後にしっかり踏んでおくのを忘れず、こなしてホルマジオが恐ェ。と漏らすのは聞き漏らさなかった。 「お前、どんくさそうだからな。怪我すんじゃあねーぞ。」 「さっきホルマジオからも言われたけど。」 ギアッチョにまで言われたら槍か、吉良でも降ってくるんじゃないかとも思えたが、言われたら蹴られそうだから、その言葉は飲み込んだ。朝食を再開したら、プロシュートが現れた。パンツ一枚で。 さすがにイケてるイタリアーノ。朝から豪快で。 前 戻 次 ×
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