ルドルフ | ナノ


壁につながった鎖を勢いよく引けば鎖は粉々に砕けた。キャッと小さく誰かが声をこぼした。

「これが5年前に村を森を破壊し人を殺めた少女です。何名かの犠牲を引き換えにこの少女を捕獲し、檻の中に収納しました。ようやく私の命令にも従うようになってきましてね。」

ニヤニヤ笑う飼い主が合図を一つ出せば、サメラは駆け出して一人の男に飛びかかろうとして、寸での所で制止をかけられサメラはびたりとうごくのを止めた。

「たまにヤンチャはありますが、まぁまだ可愛いほうですねっ」

飼い主は乾いた笑いを貼り付けて、軽く謝罪を述べたがる目標にされた男はくだんねーの。と吐き捨てた。

「獣はもって荒々しい目をしてんだよ。なーんも知らねぇんだな」

欠伸を一つして、「このまま北に上がって来いよ。本物のショーを見せてやるよ」と。言葉を残して帰って行った。
目標にされた男、この男がサメラの人生の変わり目に立つ男であった。が、今のサメラは、ただ今晩も殴られるのかな。と鈍い頭で考えた。

「サメラ、解ってんだろうな。」
「…」

通り過ぎに聞こえた言葉にサメラの背中は酷く凍えた。

「黙って俺に従えっ」

ストレートに蹴りが一発入った。胃を抉るような痛みを持つ蹴りは、朝から食べてない胃を刺激し、サメラの世界をチカチカと星を散らした。

「化け物を買ったのに、しゃべらねぇし騙されたんじゃねえかって疑っちまうなっ」

痛みばかりに気が向いて、何も考えれず痛みを甘んじて受けて、ただただ時間の流れを待つばかりであった。気の遠くなるような時間であったとサメラにはそう感じていた。もしかしたら、ずっとこのまま生きていくのでは。とも仕事が走り出した刹那、遠くで悲鳴が聞こえた。

「魔物が…!」

キャラバンの悲鳴があちらこちらで湧く。血の臭いに気がついたがサメラは足ヶ瀬で動けないことに気がついた。きっと飼い主は自分を助けないだろう。
腰の引けた飼い主が出入り口の扉にかける寸でのところで魔物が押し入って牙を向いた。

「ひぃっ。止めろっ!」

悲鳴をあげつつ尻餅をつく飼い主が後ろに後ろに逃げようとするが、恐怖に逃げ切れず動けないままで、対して立つ緑色の魔物はのそりのそり飼い主に狙いを定めて、腹を抉り赤を盛大に散らした。



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