ルドルフ | ナノ


近衛兵は主に三班に分けて、警備訓練事務とローテーションを回していたはずだ。とサメラはそう業務受付を聞いていたし、今日が訓練日だとも聞いて訓練場に来たのだが、見知った顔は居らず違う班の面々が、ニヤニヤ笑っていたので、あぁ。と一人理解する。
なんとも愚かなことだ。と思いながら、ため息をついて人気のない通路に面した壁に向かうどこにいくのだろうか、という嫌な視線を受けながらもサメラは大きな跳躍を一つで何事もなかったのように、適当なフロアの窓から中にショートカットして入る。無論、去り際に冷たい一瞥をくれてやるのも忘れない。
知らないものを弾くのはよく解る。昔から有っていた。別に飽きるまでやれば良いと思っているし、サメラは我関せず時間の短縮方を見つけているので、今回の事に関しては時間は問題ない。バロンに居るのもわずかな期間の契約だし、終わればどこかに行けばいいと思っている節もあるので、無頓着を装っている。そんな異端児のサメラを慕う部下もいるのは、少しなんともいえない気持ちになるが。それも、いつかはどうでもよくなるだろう。
人気のないことを確認して、そろりと人混みに紛れようと歩き出したが、背後から声をかけられてサメラは身を堅くして、振り替えるとそこにカインがいた。

「お前の玄関はそこか?」
「……なんだ、お前か。」

驚かせるな。といいつつ、足は歩き出そうとすると、待て。と言われ、サメラは肩を落とす。

「予定を勘違いしていたのでな。少し急いでるのだが?」
「何かあれば言え」
「断る。」

ただでさえ、セシルの兄弟であることも伏せ、一般からの叩き上げの兵を演じているだけだ。厄介事は増えないに限る。
まぁあちらさんも、飽きるだろうと言い捨てて、サメラは仕事があると残して、歩き出す。二三歩いてから、何かを思い出したように振り替えってサメラはカインに問いかける。

「あぁ、そうだ。次は何が食べたい?」
「肉。」
「もうちょっと、捻るとか……まぁ、いい。わかった。なんかする。」

じゃあ、次で。と片手をあげて、今度こそサメラは消えていった。その背中はすこし寂しそうにも見えた。


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