ルドルフ | ナノ


魔導船は、ゴルベーザが月に行くために上がっていった。
そして仲間は、日常に溶けていくように帰っていった。
見えなくなった魔導船を見つめていたら、声をかけられてサメラは視線を前に向けると、バロンに向かう面々がこちらをみていた。

「サメラ、行くぞ」
「あぁ……わかった。りゅうき……カイン」

ぎろりと睨まれたので、そっと訂正しておく。丁度いい機会だろうと、サメラも観念して、その名前を呼び改める。ぽつぽつと歩きセシルの前にたてば、彼はにっこり笑って口を開く。

「サメラ。行こう」
「わかった。わかったから、ホールドをかける指示出すのやめろ」

そんなのしなくても、行くっての。と吐き出しながら、サメラは赤き翼に向かって歩いていく彼らの後ろにつく。先の旅では先頭を勤めることも多かったが、恐らくこれからはずっとこの位置になるんだろうな。と思いつつ、歩き出す。プロムとはそこまで話をしてないけれど、恐らくここにいないということはミシディアに残ろうと思っているのだろう。
何かあれば、三つ子共共でくるだろうと判断して、サメラは平然とタラップを渡って赤き翼に乗り込む。十年ぶりか、と思いつつ視線をあげると空は酷く青く雲ひとつない快晴で、視界を奪うようにプロペラが回り出す。シドの大きな声がセシルに向かって流れていく。それを聞きながらバロンはどんなところであろうか、と思い馳せてみたが、どうせあと半日で見える世界だ。考えるのをやめようかな、と思いぐるりと見回す。
男たちは赤き翼を動かすためにあちらこちらに動いてるので、サメラはどうしようかと考えていたら、サメラさんは母上と一緒にいらっしゃってください。と早々にお払い箱になってしまった。
仕方ないか、と判断して、操舵輪近くにローザがいるのを見つけてそちらにいく。
操舵の近くに行くと、ローザもサメラに気がついて、緩やかに手をふるので、遠慮なくその横に位置つく。

「さっき、セシルと話をしてたんだけれど、サメラはどんなことがしたい?」
「どんなって……なぁ。」

仕事は仕事だしな。セシルに言われたらなんでもやるさ。と諦め口調でいい放っていると、出るぞ!と何処からともなく声がして、すぐさま赤き翼が重力の鎖を立ちろうとけたたましく翼が回る。
それらを一通り見回して、操舵輪に視線を向けるとシドが任せろと言いつつ舵を右にきるのを見つめながら、どこかバロンに期待している自分がいて、なんとも言えない気分になりながら、サメラは遥か先を思い浮かべて消すのであった。

The after 終。


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