そしてキャラバンは世界を回る。また時間を経て、齢凡そ12、3ぐらいのサメラはバロンで公演はせず行商だけしてまた出発するという風な計画であった。 「まいどあり。」 最後のひとりを見送り、サメラは息を吐き出した。 冬が近いせいか、吐く息は白い。冬用マント去年ので大丈夫だろうかと考えて、また近いうちに衣装も衣替えしないと、なんて脳裏をかすめる。 荷仕度を片付けていると、どこからか啜り泣く声が聞こえてふとサメラがそちらを向いた。金の髪をした女の子が、ぐずぐず鼻を鳴らしてこちらを、向いていた。まずい、目があった。なんて思うよりも早く女の子がサメラに駆け寄り、ぐずぐず泣いた。普段日頃から商売を交わして年上しか喋らないサメラには目の前の女の子が未知の世界との遭遇にも感じて気まずそうに、どうした?と切り出した 「セシルとはぐれちゃったの。」 「…どんな人…?」 「お兄さんみたいな髪の毛色でね。きれいな青の目でね。…それから…」 ふんふん。なんか容姿にてるような気も…あれ、そうお兄さん。そうお兄さんね…お姉さんだが…。まぁいいけど。一回しか会わない人だから、気にしてないけど。うん。 「んー似た奴なぁ…見てないけど、一緒に探す?」 問い掛ければ、小さく彼女は頷いた。服の裾をつかんで家鴨の親子のようにサメラと少女は歩き出したが、売上を放置して置くわけにいかない。 売上も片付けも済ますから、ちょっと待ってな。と頭を撫で手早く片付けを済ませて近くの団員に行ってくる。と言つけてサメラと少女は町の中を歩きだした。石畳に、木靴の音がなる。 そういえば、探し人は銀髪らしいが、旅をしてきた今までに、同じ髪色の人物を聞いた事は一度もない。。 「あ、」 少女が声を上げればサメラの掴んでいた服を放し、タッタタッタと駆けてった。人ごみに紛れた以上彼女をさがす術はない。きっと誰か知り合いを見つけたのだろうと、サメラはふぅ。と息吐いて、来た道をゆっくり歩いて帰った。そういえば明日が出発だ。そろそろ支度をしなければ、飯に食いっぱぐれると判断して足早に人ごみに消えた。 冬近いバロンに鉛色の雲がのる。大雨にならなきゃいいんだがな、とぼんやりとした感想を持ち、冷たい空気を取り込んだ。 ただの幼少期の笑い話の思い出だ。 前 戻 次 ×
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