ぼくとスカウト テディベア 3e 





音楽室からピアノの音がするので、凛月さんがいるのはわかったけど。そのままぼくはひっそり学校を抜け出して、人形遣いと今後の活動について話をするために人形遣いの家に乗り込む。そわそわしてるから、聞いてみるとみかが帰ってこないからそわそわしているらしい。なんともまあ言葉の足りてない師弟だことで。ぼくは一安心。とりあえず、みかは学校で用事があるらしいから泊まり込むし明日の朝には帰ってくるのではないかな?、そう伝えれば人形遣いは、多少そわそわが無くなった。ほんと、言葉が不足してるよね、君たち。そんなこんなで、打ち合わせをするが、まあ揉める揉める。というか、言葉一つ一つ確認しながらの打ち合わせは、相互の確認がとりやすいように行って真夜中に至った。ひっそりと学校に、弓道場に戻るとみんな寝静まっているだろうとか思っていたが、眠っているのはみかだけで、青葉くんも月永くんも思い思いの事をしていた。

「録音は終わりましたか?」
「えぇ、つつがなく。今日のノルマ分はね。」
「お、帰ったのかーお帰り、央。」

みかくんは寝てますよ。と教えてもらって、ぼくもさっさと着替えてといえど、ぼくはブレザーとヘアバンドをはずすぐらいだけれど、装飾品を畳んで頭もとに置いてから寝床につく。ぼくのいない間に月永くんの相手をさせられてたらしく、ぼくもなんだかんだと話をしてから、眠ることになった。今日は昼間そこまで寝てないので、速やかに眠ることができた。まぁ、お休みするまでに一曲とかからないのはぼくの特技かもしれないね。
ふと、目を覚ませば、朝だった。眠ると一瞬ではあるが、それなりに体力は回復したのだろう。

「おはよう!朝だぞ!」
「ぬう、おはよう。」

ぼんやりとしている記憶のなかに、どうしてこうなってた。と履歴を漁る。そうだそうだと思い出して、起き上がる。月永くんは朝から元気で、青葉くんを飛び乗って叩き起こして、なかなか起きないみかにプロレス技をかけている。朝から元気なやつだと毒づいて、身だしなみを整える。そのまま布団に入ったので、カッターシャツはしわしわだ。

「月永くん、うちの子の骨を折らない程度にお願いしますね」
「んな、殺生な!なかば兄ィ!修学旅行で凛月くんも同じ技をかけてきたえど、これ『Knights』のなかで流行ってるん?」

『Knights』もなかなかの肉体派らしい。リッツはおれが育てたと、胸を張ってるが、誉められたことではないだろうに。とか思ったけど、凛月さん対策らしい。朔間さんところはみんな、というか、吸血鬼はなかなか起きないのは共通らしい。まぁ、親戚筋のぼくが言っても説得力はない。だって、ぼくはほぼほぼそういうものを持ってないから捨てられてるのだし。まぁ、当時の詳しいことなんて誰も教えてくれないから、なんでもいいんだけど。

「ミカ、うちのリッツと仲良しな感じ?ありがとう、うちの子と仲良くしてくれて〜。」
「仲良しなんかなぁ。わりと教室ではふたりで隅っこにおることがおおいから、自然とよく喋るんやけど、どっちかっていうとなるちゃんのほうが一年生のころから仲良しやね〜」

やいのやいのと騒ぐ二人をみながら、朝御飯どうしようかねぇ。と所帯染みた事を考えるのは、みかがきちんとご飯を食べないからなんだけど。思考をしていると、月永くんが思い付いたことがあるから準備が済んだら出発しよう!と声高に宣言する。何だって、とぼくが聞き返せば、まだ教えない!楽しみは後にとっておくべきだからな〜、自由に妄想してっ!なんて返答が来る。うん、いまいちわからない。

「何なん、それ、ってか昨晩お喋りしてたらいつの間にか制服のまま寝てたけどなかば兄ィもつむちゃん先輩も月永先輩も一緒に泊まったんやね?」
「そういっただろ?言ってなかった?忘れた!」

おまえ、何か放っておけなかったしさぁ、一緒にいてやろうかなって。お泊まり会もしたかったし!いやぁ楽しい!いつか『Knights』や弓道部のみんなともやろう!忘れないように手のひらにメモしておくっ。そりゃあもう嬉しそうにマジックで手に記載するのだから、奇人と言うのは恐ろしい。いや、月永くんだけだとは思うのだけれども。ぼくも一隠なんて呼ばれているけど、これはひたすら裏方活動をしているからだ。
ご家族の心配とか、青葉くんが言うのでぼくも一度連絡はいれてるから、一応言っておく。昼に学校にいくぼくと、夕方から活動する親たちとは基本的に生活リズムが合ってないのだから、そこそこ放任されてる。まぁ、夕食はみんなでという謎ルールはあれど、事情は知られてるので特に連絡さえ入れておけば怒られることはない。ただし、親は電子機器に弱い。それだけだ。

「みかくんにも宗くんが心配して連絡してきてませんか?」
「おれはほどんど着の身着のままで飛び出してきたから、手元にスマホとかあらへんわぁ」
「それについては、ぼくが人形遣いに適当に喋っておいたよ。心配してそうだったし、」
「ほんま!?なかば兄ィありがとなぁ!」
「もしかして、財布もない?」

財布は学校のロッカーに置きっぱなしやから。というみかにぼくは釘を刺す。せめて財布は持ち歩きなさい。いざというときに小銭すら持たなかったら、連絡すら入れれないのだから、きみは!と怒れば青葉くんに宥められる。ぼくが血染めの小銭入れでも作ってやろうか。たぶん人形遣いにリメイクされるとは思うけど。みかに飴よりも小銭入れを持たせるほうが重要だ。とぼくは今思う。あとで、買おう。

「みかくんは電車とかバスとかでしたっけ?それなら財布がないと帰るに帰れなくて困っちゃいますよね。」
「いいよ、青葉くん。足りない分はぼくが立て替えるし。気にしないで。」
「いやいや、これから買い物に行くから!財布がないと困るな〜って。」
「よし、買い物ついでに、ご飯も行きましょう。」

ワンテンポ乗り遅れた青葉くんが、え?と困惑している。月永くん、とりあえず説明したほうが早いと思うよ。と説明を促すが、やはりあとの楽しみ!で済まされた。とりあえず、いいから顔でも洗ってこい!準備が済んだら行動開始だ!思い立ったら吉日って言うじゃん!とぼくたち三人の背中を押して手洗い場に叩き込まれる。とりあえず、みかにご飯を食べさせるところから説得をしよう。そうしよう。

みかと青葉くんと月永くんとぼくの四人で学校近所の喫茶店で朝食をとって、月永くんの案内で町に繰り出す。月永くんは迷わずにすいすい抜けていくので、ぼくらはその後ろについてあるくと、調整役と朔間さんのところの子が店の中にいた。こちらに気がついたようで調整役が手を振った。月永くんは、いた!とか声をあげてそこい入っていく。続いて青葉くんが入ってくのでぼくは改めて看板を見直す。

「ファンシーショップですか。」
「そうみたいやねぇ。入ろっかなかば兄ィ。」
「そうですね。」

答えは月永くんが持っているんですから。しかたありませんね。ぼくは諦めて店に入る。甘ったるい女の定員が、入店挨拶の声を出してるのを聞き流して後に続く。ひたすら、ほっぺたを膨らませた調整役と朔間さんの子が餌付けしているようにも伺えて、ぼくは眉を寄せる。一通りの面子を見て調整役が半泣きになりながらぼくたちに挨拶をする。ぼくは、小さく頭を下げておくだけにする。店員が睨んでるからだよ。

「どういて、乙狩くんはあんずちゃんに新種の拷問みたいな事をしてるんですか?」
「たくさん食べて、強くなります。うん。」

青葉くんが若い子よくわからない。なんていうけど、若い君が言うんだからぼくにも解る訳がない。こちらに聞かないでください。ぼくは、彼らと一緒にされたくなく一歩下がるが、まぁみんな同じ制服を着てるので駄目でしょうね。ぼくは、他人事のように呆れる。青葉くんがぼくの態度に気づいたか、店員に睨まれてるのに気づいたのか、確か今乙狩くんと呼ばれてた気がする。彼に声をかける。

「で、月永くん。そろそろ正解を教えてくれないかい?お楽しみ、とは言ってたけれど、箱の中身までは理解出来てないよ」
「わはは、昨日、ルカたんに連絡するついでに、あんずにも電話したんだ。テディベアとかを売ってる店を知ってるなら教えて〜って。」

そういうのはシュウとかも詳しいだろうけれど、あいつには今回だけは頼れないし、他の心当たりのやつは電話番号わかんなかったから、とりあえずあんずに聞いたー。
気楽そうに月永くんは笑いながら答えてくれた。なるほど、新しいものを購入か、腑に落ちた。回りを見回すとぬいぐるみ以外にもどうもペンや筆記具まで置いてあるようだ。すでに回りがテンションをあげ出しているので、ぼくが一人すこし浮くような形になっている。青葉くんは嬉しそうに色違いのテディベアを自分のユニット用にカスタムしだしてるぐらいだ。止めるつもりはないが、この間衣装がって言ってなかったかい?ただでさえ考えすぎて手が遅いと言われるのに、やってていいのかい?なんてぼくは思ったが知らない。

「なんかキラキラした感じのお店やなぁ、あんまり落ち着かへん。わっ、女の子の服とかも売ってる!」なかば兄ィに似合いそう!
「みか、目的を忘れてませんか?」

せやった。ですね。
みかがテディベアを探すように仕向けて、ぼくは一歩引いて全体を俯瞰する。大の男が五人も集まっていい店ではないだろうに。だとか思ったがもしかして、調整役はそのために来たとか言うのではないのだろうか、そう思ったから問い合わせてみたが、どうもその通りだったらしい。比較的女と間違われるぼくもいるけれど、制服でしょう?と万が一の保険です。得意気に言うが、そう言われてもぼくも困る。

「そうですね、あんずちゃんがいれば、不審に思われてもあんずちゃんの買い物をしてるんだ〜って言い訳が出来ますもんね。」
「それもそうですけど、影片くんが心配だったので。」
「え?なんで心配とかしてくれるん?あんずちゃんはおれの敵やん?ずうっと、そう言ってるやろ〜、変な子やねえ別にええけど。」

とかいいつつ、君はこの間の病院のライブに出てたでしょうに。根っこが真面目というか、人の気持ちがというか、なんともまぁ頭の弱いというか痛いというか。悩ましい子だなあ、二人して。絶対にぼくは口に出すつもりはないので黙っているつもりだが、みかと調整役、というか、みかがややこしすぎる。勘違いするんやないで?敵が弱ってると張り合いがないんやからな。みかは強がっているが、もうこの子は根っこが素直なんだから、なんか親目線で見てしまうぼくがいた。

「とりあえず、調整役の負担にもなるから、人形遣いのお祖父様のテディベアに似た子を探しましょう。昨日の昼間はそこまで寝てないからぼくは眠たいのです」
「せやった、なかば兄ィごめんやで。付き合わせて」
「構いません、終わったら家で寝るので。」
「そうでしたね、お祖父さんの贈り物ってことはたぶん既製品ですもんね。」

探せば見つかるはずです。そうでなくても店員さんに頼めば取り寄せたりできるかも知れませんし。相手は宗くんですから、弁償すればそれで良いなんて言わないでしょうけど、新しく同じものを買えば誠意は示せます。俺達は手芸部ですから、自分で修復も出来るかもしれませんけど見た感じみかくんが壊したテディベアはだいぶ経年劣化してましたからね。迂闊に弄くると直す所かバラバラになっちゃいそうですね。新しく買い直しましょう。そのために、このお店に来たんですよね。
そんな感じ!ミカはシュウとちゃんと話すべきだと月永くんがいう。きっと二三の小言は有るかもしれないけれど、怒られることは少ないだろうと思う。これはぼくの予想なだけ、だけれども。多かれ少なかれ外れることはほぼほぼないだろうに。壊れたテディベアの損傷具合からもね。人形遣いの卒業後の面倒を工面し出してるのだから、間違いないだろう。おそらく人形遣いの事だ壊れた部分も繕って、見映えも良くして調律してやるのだろう。

「ですよね、央くん。」
「考え事をしてて聞いてなかったよ。なにがだい?」

みかくんは立派に宗くんの家族ですよね。青葉に投げられて、ぼくは家族という言葉について定義を考えるが、この場合はそうだ。と答えるべきなのだろう。一瞬で弾き出して、ぼくは肯定を示す。みかと人形遣いには立派に絆があると思っているよ。そう伝えれば、なかば兄ィだって家族やで!と思わぬ攻撃を食らった。平然を取り繕いながらも家族だなんて、ぼくにはあっていいものなんだろうかね、そっと呟くと、店内BGMに混ざってぼくのスマホに電話が鳴る。
もしもし、そう出ると人形遣いの声。今どこだ?と言われて場所を答えると、近くにみかが居るか?と質問がくる。要領得ないが、いると返事をすれば、すぐさまおみかに変われと。なるほど、よくわかってますねぇ。クスクス笑って、電話先の主の望むがままに、電話をみかに渡してやると、みかは恐る恐る電話に出た。昨日話し合った内容についてはいつ公表するかは知らないけれど、みかの話をしている内容についてはなんとなく、というか、よく聞こえる。スピーカー設定にした覚えはないんだけどな。細々と報告してるらしい、が人形遣い。きみは昨日話をしていただろうに。怒鳴りすぎて音割れがひどい。みかはちゃんと話そ?と言って最後に挨拶して電話を切った。切れたのを確認して、ぼくにありがとう。とお礼を言われたが、まぁぼくはなにもしてない。

「お師さんに、なんかすっごい怒鳴られた〜」
「どうも、人の話を聞いてないというか、帰宅が遅い、でしたか?」
「そやった〜」

こっくり返事をくれるので、まぁこれできちんと似た子を見つければ一件落着かな、呑気に構えてたら、月永くんが慌てて、あの剣幕なら全速力で迎えに来る可能性すらあるぞ!と言い出すので、全員で仲直りするようのテディベアを探すのだけれども、一番みかが納得したものを選んで購入する。選んでる間に、朔間の子がどうして熊を、と言うからぼくの蘊蓄大会になったのはここに残さないでおく。
ちなみに、人形遣いは、全速力でここまで駈けて、みかとぼくを回収してった。ぼくの休みが瞑れたのはお察しである。



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