ぼくと生け贄◆不死者たちの復活祭 3e 





一週間で親戚のあれこれで翻弄されてまともに睡眠がとれてませんけど、とりあえず根性とカフェインで極限まで睡眠時間を削って親族への報告やら学校やら企画を進めたりだとか。昼と夜を渡り歩くぼくにとって、かなりしばらくの消耗戦だった…。この一週間より酷いものはないでしょうし、あの事故と同列ぐらいの位置に座していいだろう。親族としての衣装に身を包み、時が来るまで隅の方で待機していますが、如何せんここの所睡眠不足が祟って、かなりの眠たさがぼくの耳元でささやいてて今にも寝そうですね。今回の一番の大仕事を片付けた安心か、ふっと一瞬寝ていましたが、ふと目を上げると人が一人。ぼくに声かけるように立っていた。

「…うっわ!!」
「…おまえたちは、なにものだ?」
「あ。あのですね。」

そうでした、黒装束で顔もストールで覆っているので誰かわからないのでしょう。外しても日光に対して弱い人たちなので、諦めてぼくが代表するようにストールから顔を出せば、おや?朔間先輩?と言われ、ぼくはすかさず夢ノ咲の3年、晦です。と身分を明かす。朔間さんじゃないですからね。こんなところで騙っても意味ないですし後に身内がいるので見つかるとやばいでしょうね。

「えぇと、朔間さんの子ですよね?ぼくたち、朔間さんの一族の者でライブが始まるまで隅の方にいますから、そっとしておいてくださっても?」
「だが、見るからに不審者だが」

…そりゃあそうでしょうよ。頭からつま先まで真っ黒、顔も覆っちゃってるようなマントまで着ちゃってるんですから、怪しさ満載ですよね、知ってますよそうですよね。でも、残念ながらこれ脱いじゃうと怒られるんですよねぇ!だから脱げないんですよ!ぎっ、と睨まれてぼくは小さく悲鳴を上げる。

「でもですよ。ぼくたちもちゃんと確認しないとダメなんですよ。対外的な窓口は今回ぼくがになってますし、怪しい身分じゃないんですよ。」
「弱い者を守るためだ」
「弱い者にも手を出しませんし、一旦朔間さん呼んでもらうかしないと他は言う事聞いてくれないんですよ…。ですから、朔間さんを呼んでもらっても…?」

ほら、ぼく。朔間さんと同じ目と髪の色をしてるでしょう?珍しいでしょう?赤い目?
こういう使い方をしたくはないけれど、結構真面目な下級生を騙すようで心苦しいけれども、ここを切り抜けなければ一族追い出されてライブをされては困る。いままである程度の都合をつけて来たのに、ここで水の泡にすることはできません。比較的日に強い人ばかりが来てるので、あれなんですけど。絶対に朔間さんの計略が入ってる気がするのは企画書からうかがえる。最低限の人数で来てはいますが、こんだけの人数が集まってしまっては怪しくも見れるでしょうに。
朔間さんの子と話している間に、親族たちによそに逃げろと指示を飛ばしてある程度人数をばらけさせていると、都合よくというか都合悪くというか朔間さんがやってきた。

「晦くんかえ?」
「あ、こんにちは。朔間さん。」
「朔間先輩。知り合いか?」
「我輩の親戚じゃよ。それに『Valkyrie』でよく演奏しておるし、我々にも楽曲を録音して使わせてもらっておるよ。」

そうだったのか。と朔間さんの子がぼくに謝罪してきたので、大丈夫ですよ。とやんわり濁しておく。親族も離れたので、ある程度日陰かどこかの屋内で時間がくるのを待っているのでしょう。さて、どうしましょうか。と思考を回していれば、朔間さんが晦くんご飯でもどうだ?と言うのでご飯でなく睡眠をとっておきたいですけど。なんて言うと朔間さんに睨まれるので合間に笑っておくことにしてると、肯定ととられたようで、屋台の方に連れられた。話を聞く限り、朔間さんの子は乙狩くんだと教えてもらって屋台でいろいろ朔間さんが買ってみてる。そして、乙狩くんが朔間さんが購入したものを片っ端から持って歩く。…もしかして、ぼくも食べさせられる感じですかね。ぼくは絶賛睡眠不足で体調絶不調で食欲はない。…ちらりと隣を盗み見たが、とりあえず彼にいっぱい食べてもらうしかないでしょうね。

「ちょうど、ここが開いておるわい。」

ほれほれ座れ。と言わんばかりに朔間さんが机をたたくので、仕方なくぼくは朔間さんの隣に腰を下ろす。右手に朔間さん、左手に乙狩くんが座って机の上にご飯を広げていく。座ると、しばらくの睡眠不足が祟ってか。座ると意識がぶっ飛んだ。乙狩くんにゆすぶられて、自分が寝ていたことに気が付いた。

「晦先輩、こんなところで眠ると風邪をひいてしまう」
「…あぁ、寝てしまいましたか?」
「一族の連中がいる場所まで案内せい、わんこ。ついでに日傘をさしてくれると助かる。」
「チッ、手のかかる老いぼれだな畜生」

…おや、意識を飛ばしている間に、また別の大神くんでしたかね。がそこにいらっしゃいました。気配に敏いぼくが気づかないんですから、よっぽど寝てないのがたまってたんでしょうね。ぼくは欠伸をかみ殺しつつ、周りを見ると朔間さんと視線が重なった。

「おきたかえ?晦くん。我々もそろそろ行こうではないか。」
「はい、朔間さん。」
「行くぜ『朔間先輩』足腰が弱ってんなら、抱っこしてはこんでやろうか?」
「無用じゃ、今はまだ、我輩はしかと両の足で大地に立っておるよ。」

晦くん、行くぞ。と促されたので、ぼくは脱いでいたフードをかぶり直し、朔間さんの後ろを歩き出した。集合の連絡を入れて、朔間さんに説き伏せてもらうという一連の流れを聞いて、ぼくは親族が居そうなところをピックアップして、朔間さんと分担し所定の場所に集まり直すことにしました。ぼくは朔間さんよりも人を集めないといけないのか、ともうと多少胃が痛くなりますが、誰がどこに行きそうかなんて、そんなのは予想の範囲ですよ。だって黒づくめで集まってると不審に見えますからね。さて、ぼくも駆け出しましょうかね。
人気のない影のところで、親族を集めて、その中心で朔間さんは親族に説き伏せる。ついでに、僕の名前も出して、認めさせるように動く。…そこは余計ですよ。ちょっとムッとしたが見つかるとややこしいので、、ぼくは澄ました顔で演説を聞く。結びのあいさつに入りかけてるので、そっと視線を動かす。多少親族たちは朔間さんから言葉を聞けたことに、安心したのか表情はまだ柔らかいようにうかがえる。演説では、どうもぼくたちは不安を与えない様に離れた場所に天幕を張って観戦するらしい。…あるいみ事前準備みたいなかんじがして、少し居心地がよさそうだ。…親族さえいなければね。朔間さんの演説も終わりましたし、とりあえずライブまで天幕の中でゆっくりさせてください。ぼくの体調は先ほど眠って多少ましにはなりましたが、カフェインがなければ寝てしまいそうです。…ぼんやりライブを見てたら、朔間さんにぎろりと睨まれた。…羽風くんを多少手荒に棺桶に突っ込んだのばれましたかね。そして、最後の最後に、朔間の一族と乙狩くんのお家が関係あるらしくて、ぼくが驚いた。…いや、それは初耳ですし、末端の家に情報が届かないだけなんですけどね。とりあえず、儀式はつつがなく終わったようですし、ぼくたちはさっさと撤退して寝たいです。眠たいです。



[*前] | Back | [次#]




×