発見!スチームパンクミュージアム 2 






ライブを行うのが決定して数日後、十分に柔軟を行っていると『2wink』がやってきた。挨拶もそこそこに人形遣いと繰り広げてると、一人がぼくの前にやってきた。

「晦央さん。ですよね?」
「えぇ……この三毛縞さんといなかった子ですね。はじめまして、晦です。」
「朔間先輩とそっくりですね。」
「ぼくと朔間さんは親戚ですから。それなりに似てるんですかね?…えっと…?」

首を傾げつつ、話を切り替えるようにすっとぼける。自己紹介が遅れました。葵ひなたです。というので、その名前を反芻し握手を一つ。短い期間ですがよろしくおねがいしますね。と笑っておく。こう、朔間さんと真逆の方向に進めていけば双子だという事実なんていうのは誰にもわかられないだろう。

「君たちが羨ましいですね。」
「…はい?」
「いいえ、なんでもないです。年を取ると思ったことがすぐに口から出ちゃって。駄目ですね。」

きみたち双子が羨ましいだなんて思うのもおこがましいのにね。そんな言葉を飲み込んで、何でもないふりをして、時間も時間ですから、練習に移りましょうか。と話を逸らして部屋の隅に置いた楽器を取り上げた。間奏のアドリブをどうやって動かしていこうかと考えながら、構えると同じタイミングで人形遣いが楽曲の設定を行ったらしく音楽が鳴り始める。それに合わせてかきならしているとゆうたくんのほうがずれてきている。指摘しようかとあぐねていると、自分で気づいて修正をかけている。が。修正に気をかけすぎて振りを誤った。

「ごめんなさい、またテンポがずれちゃいましたね」
「んあっ、謝らんでもえぇって。」

なんでやろ。『2wink』の二人はおれたちの動きにうついていけるのに、なんでかずれてまうんよね。まぁ、クラシックと、日本のポップスでは拍の取り方が違いますからね。前拍を強くするか後拍を強くするかの問題ではあるけれども、そこはユニットの特性でもあるでしょう。そう告げると、隣の人形遣いは納得していた。

「今回のライブのテーマは僕たちが普段、表現している世界観に近いからね。君たちにも『Valkyrie』に合わせてもらう。異論は有るかね?」
「ありません!今回、『2wink』は『Valkyrie』にお願いして出させてもらったんですし。俺たちが合わせるのは当然ですよ。」
「でも、どうやって合わせようかなぁ?」

そういって、ひなたくんは思考を走らせますので、その間にぼくは楽器を持ち替えて基礎練習ようにメトロノームのぜんまいを回していると、人形遣いがみかに話を持ちかけた。『2wink』の指導をしなさい。そう、みかに言った。それを聞いたみかもみかで驚いて自分を指差している。…餅は餅屋といいますし、ねぇ。

「まぁ、でもみかもそろそろそういうのも経験させないといけないですからねぇ。」
「僕は衣装づくりをしなければならないし、小鳥に作らせると血染めになってしまうからね。指導する時間がないのだよ。だから君に頼んでいる。」
「んあっ、頼むとか言わんと命令してくれてえぇで?」
「いえ、あなたの経験も考えてですよ。」

ぼくは音しか作れないですし、人形遣いは機会と縁を紡がせようとしてるんですよ。どうしてもならないときはぼくを呼びなさい。救いの機会はあげますよ。ですから、やれるところまでやってみなさいな。そう伝えれば、みかは納得して二人にレッスンをするから見ててな!央兄ィなんて言われたのでぼくも部屋の隅で基礎練習を行いながら、みかが困ってしまったときに手を出そうと判断して楽器を持って隅に移動する。スチームパンクというのならば、今回は大きくないほうがいいだろう。蒸気とファンタジーでやるならキィは複雑になるならばきっと必要なのは木管楽器だろうなぁ。けれども、とりあえず基礎練習からと思い。近くの椅子を引っ張り出してきてロングトーンをはじめながら聴覚を働かせる。後の会話を聞きながら基礎を進めていくとどうも雲息は比較的良さそうだ。うん。踊れなかった君も踊れるようになったんですから、それを伝えていけばいいと思いますよ。なんてぼくは思いながらロングトーンをする。最短五分。気の向くままに鳴らしている。単調なのだが、これは昔からやっていたらある程度無心でできる。物心つくまで基本的にほったらかしにされているので、そばには音しかなかったからそこまで苦でもない。何もなかったから口笛を覚えてずっと同じ曲をやっていた。もしかしたら朔間の覚えがーで親たちが楽器を与えてくれたからある程度にはなんでもできるようになったのだけれども。ぼんやりと過去を思い返していると、どうも話は進んでいるようでみかが繰り手を行っているようだ。これはこれで問題なさそうだな、と思いつつぼくはそのまま今回の楽曲をメトロノームに合わせて吹き鳴らしていく。無駄に時間があるからかしてか、昔のことを考えてしまった。どうも昔のことは嫌いだ。音のない空間にずっとぼくだけがいたのだから。無音がどこか苦しくて、息がしづらかったのはよく覚えている。

「央兄ィ。」
「…あぁ、どうしました?みか。」
「お師さんの繰りをみせてみたいんやけど、おれがやると旨い事説明できひんから、央兄ィに人形側してほしいんやけど。練習中やったよなぁ……」
「構いませんよ。人形として動くのは久々ですねぇ。」

結成当初はやってたりしましたけれど、気づけばぼくは女主人役だったりしたので、比較的繰る方だったのだが。人形側で動けるだろうか。あの頃から変わってしまった事はたくさんあるから、多少は不安だけれども、そこは年上の意地ですよね。ぼくは穏便に笑いながらみかと簡単な打ち合わせをして楽曲をかけてもらうように依頼する。

「葵くんたち、音楽をかけてもらってもいいですか?M2でお願いします。みか、一番だけですからね。」
「あ、わかりました〜。」

ひなたくんが再生ボタンを押すと同時に音がなりだすのでそれに合わせて軽く小さく飛ぶ。その反動を使いながら体の上半身をがくりと倒して、いると螺子の音がスピーカーから聞こえだすのでそれに合わせてゆっくりと上体を音に合わせて動かす。前の方からおぉ!なんていうどよめきが聞こえたけれども、それに目線を向けることなく上体だけを横にずらす。その際も目線は一定を保っていて、また感嘆の声が聞こえる。ひとしきり演技を終えれば、ぼくは首を大きく回した。

「まぁ、こんなかんじですけど。」
「央兄ィ相変わらず凄いでぇ」
「みかが人形遣いに似せてるからでしょうに。さて、葵くんたちは理解できましたか?」

目を輝かせてぼくの前に二人が並ぶ。参考程度にして貰えたらいいですよ。ぼくはただの鳥ですから。人形でもなくなって、ただただ言葉を放って息をしているだけの愛玩の鳥ですからね。みかも、これでよろしいですか?なんて問えば、みかも納得してくれたようでありがとう!おおきに!と満面の笑顔で言ってくれるので、その背中を押して練習に戻りなさいと促して、ぼくも自分の練習に戻る。結局このあと別の楽器を取りに行ったりしてる間に眠気が来て、一旦仮眠をとるはめになったりして、ぼくの行方不明説がでたりしてたらしい。そのせいで、とても人形遣いに怒られた。



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