晦央 第一話 





なぜか転校生視点で書いてた。

手芸部に、正しくは斎宮宗にドリフェスの打診をするために、私は手芸部の扉をに手をかけた。いつもなら施錠されているはずなのに、空いているということは誰かがいるということだ。ガラガラと横開きの扉を開くと部屋の隅に姿を見つけた。とても大きなタオルケットを頭から被っていて姿はよく見えない。辛うじてスラックスが、上靴が見える。斎宮先輩って昼寝するんだ、と思いながら私は小さな声で斎宮先輩?。と投げるが、返事でなく寝返りひとつ。ごろりと動いたので、タオルケットの隙間から見えた髪の毛が桃色でないというのに気づいた。
髪の毛は烏の羽のような黒。カーテンが風に揺られて太陽の日差しが黒を照る。黒かと思ったが、どうも違う色濃い紺のような藍色のような色合いをしている。桃色でないならば、影片くん、と声をかけ直すとそれは小さく唸ってからもぞもぞと動き出した。体を起こして、タオルケットを頭から取り外す。まだ寝足りないのかとろんと開いた目はわずかに黄色が入ったような鮮やかな緋色。猩々緋って色があったな、なんてこの間作った衣装のことをふと思い出した。
そして思っていた色と違ったことに私ははどきっとした。知らない人。黒と赤には見覚えはあるが、知っている顔でもない。アイドル科の校舎にいるのだからアイドル科なんだろうけれど、そもそもここは手芸部であって寝る部屋でもない。あの、と恐る恐るが口を開くと、彼は眠たげな目を擦りながら、口を開いた。

きみは、だれ?

眠たげな高い声。まだ声変わりも始まってないまるで女の人のような柔らかな声。彼は起き抜けたばかりの眠たげな瞳に赤色、血色の悪い白い肌と黒髪。同じ学年のアイドルが一瞬頭の中を走ったが、そんな彼との相違点は、ヘアバンドで髪をすべて後ろに持っていっているぐらいだろうか。でも、そうなると、どっちかっていうと彼よりもそのお兄さんに似ているような。とついつい人を観察してしまうのは自分がプロデュース科だからだろうかと思ってしまう。考えを走らせすぎたか、目の前の彼は、返事。と言わんばかりに手で机を叩く。ネクタイの色は緑、三年生のようだ。

「私は、プロデュース科の二年で。」

名前は。と言っていると、まだ寝てないのか。なんて背中から声がして、振り替える。斎宮先輩が驚いたような形相でたっていた。そのまま私はの横を通って、猩々緋の彼の元に駆け寄る。斎宮先輩は、猩々緋の彼の元に寄っていくと、優しい声色で語るように彼にいう。

「昼間は寝ていないと辛いだろう。」
「うとうとしてたから体力は多少回復した。」
「まだ完全ではないのだろう?」
「でも、起こされた。彼女に。」

猩々緋が私を見ると、斎宮先輩がその視線を辿るように追って私を捉えれば怖い顔をして小娘。と吐き出してから貴様はもう一度寝ろ。とタオルケットを頭から被り直させる。わかったよ、と返事をして彼はもう一度そこで横になる体制をとる。そうだ、と思い出したように、彼はタオルケットから顔を出して、柔らかく微笑んだ。

「きみは、誰でもいいんだけど。ぼくは、演奏家。壊れてしまったどこからも必要とされない……いや、正確には『Valkyrie』には必要とされているだろう演奏家さ。よろしく。」
「迅速に寝たまえ。騒ぎすぎだ、熱を出すぞ。小鳥。」
「はいはい、おやすみ。人形遣い。ぼくは皇帝でもないからそこまで虚弱じゃないよ。」
「いいから寝たまえ。」

人形遣いが煩いから寝るけど、改めてよろしくね。調整役さん。
ゆるやかに赤色がほっそりと弧を描いた。凛月くんとおんなじ目をしてる。と私は思うと、小娘!と小声で怒鳴るという小器用な怒り方をする斎宮先輩にこってりと叱られるのでした。理不尽だ。先輩だと思っていたのに。ひたすら怒られてから、鍵を閉め忘れてたの斎宮先輩なのに。と言うと、開き直られた。空いてるからと言って主の不在を感じとれと。寝てる先輩が斎宮先輩だと思っていました!と胸を張ると、貴様はもう黙ってろ。と大声で怒鳴られた。
「煩いから寝れないんだけど、人形遣い。」と先輩もおこられてるので、もしかして、この演奏家って、すごい人なのかもしれない。と私は思った。折を見てこの先輩について調べようと思う。まずは『Valkyrie』の関連性が高いに〜ちゃんからだろうか。なんて算段をつけつつ本来の目的であったドリフェスの打診話を持ち込む。結果として、三奇人に匹敵するほどの人だと知るのは上の話から3時間後であった。



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