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集合場所についたら俺が一番最後だった。時間ぎりぎりと思ったが、10分前に駅前についたら「『流星隊』の一之瀬先輩?」と言われて振り向くと、朱桜が車の中にいた。今から集合場所に行きますが、乗りますか?と言われたので楽したい俺はいいの?と聞くと、行くところは一緒ですから。と言われた。そりゃそうだ、と思って同席する。車に乗ると、そのまま車は動き出す。朱桜だったかと向かい合うと、なんか居心地悪くて失敗したかな、とか思いつつ窓の外を見る。少し風景が流れると、向かいの少年が口を開いた。

「今日は本当にありがとうございます。」
「俺じゃないやつに言えよ。俺は別になんもしてないからさ。」

企画に乗ったのも俺じゃないし、採用したのも俺じゃない。俺は引っ張られて押されて歩いてるだけだし、俺はそんなに変わってないよ。前から。たぶんそのあたりは俺からそんなに言いたくないし、きみの先輩にでも聞いてくれたらいいよ。別に、知られてもそんな痛くはないし。ねぇ、三年生なら俺の細かいこともそれなりにしってると思うよ。
へらっと笑うと、目の前の少年は首を傾げている。真綿のような少年だな。と思いながら、景色に視線を動かす。歩いてみる景色がいつもよりも滑らかに動いて、こんな風に見えてるんだなぁ。と思いつつ呆けていると集合場所につく。「おはよー千秋。みんな。そこで一緒になった。」と満面の笑みで言うとちょっと千秋から怒られた。この間の仕返しかよ。と言うと、ほっぺたつつかれた。痛い。しかも奏太に強めにつねられた。痛い。きみちょっと一年前出てない?とか思ったの、が一時間前。
絶賛俺船酔い中です。うえーっぷ。乗った瞬間から俺がダウン。あんずから一応乗り物酔いの薬は朝に飲んだんだけどどうもだめらしい。うえーうえー言いながら奏太におんぶされる。船とワイヤーは違うらしい。一瞬か長時間かだもんな。しんどい、うえっぷ。バケツとお友達になりながら俺は薬が効くまで別室隔離。あんずが心配そうに見てるけど気にするだろうから、飯食って来いと部屋から追い出す。あんずと入れ替わりで翠がやってきた。

「一之瀬先輩?」
「あー翠?」
「飯食えますか?」
「んー落ち着いたら食う。たぶんあと10分したら効いてくると思うから置いといてー」

目が回ってる気がするけれども、鉄虎が楽になる方法を携帯で調べていてくれたのでそれをならって壁にべたっと背中につけている。もうちょっと元気になったら飯も食えるだろうし、食ったら一層元気になるのが俺の体なので、それをちょっと期待している。
俺のためにそんな時間を割いていらない。と伝えると、ちょっと困った顔をするので俺寝るからいいよ。いっといで。と翠を追い出す。背中を見送って俺は眠たくなって横になる。正直しんどい時は体の声に従うのがいいのだろうと思っているし、起きていると吐き気がするので、俺は横になりながら、うとうとしてたがそれでも吐き気が止まらずに胃の中をかき混ぜられてる感を否めない。空っぽなのにそれでも出ようとするので口の中はかなり酸っぱい。うえっ。と嗚咽を出しだせば扉が大きく開いた。音を聞いてそちらを向くと慌てた千秋がそこにいた。

「大丈夫か!?有」
「あー……いけるいける。」

口ゆすぎたい。と伝えれば、わたわたと俺に水を渡してくれる。そのまま俺は口をゆすいでバケツに水を吐き出す。大丈夫かと聞かれたが、全然無理。一旦寝る。居てもつまらないから出てっていいよ。というと、俺がお前の手をはなすか。とか言い出した。俺はほんといいから。と伝えるが千秋はいうことを聞かない。ほんと、ほっといて。頼むから。助けての声が聞こえてー。とか言うが俺は困ってない、それ別の誰かだからパトロールいってこい。と部屋から追い出す。本番45分前にお越しに来て。と伝えて、千秋の背中を押して部屋から追い出す。鍵もしっかりかけて喧騒は潮のように引いてった。だる。とりあえず寝る。船と同じように波に揺られてる感を感じながら、眠りの世界への扉を叩く。
グースカ寝てふと目が覚めると時間一時間前。翠が置いてった飯を一通り食べて、部屋を出る。散歩をかねて軽い運動の時間に興じる。甲板に出ると、太陽が高々と輝いている。船尾の人気のないところに移動しておてんとさまに柏手打つ。今日は成功しますように、なんて祈りながら手を合わせると双子の一人が声をかけてきた。

「あーどっちだ?ゆうたくんか?」
「違うよーひなただよー」
「モチーフないと見分けがつかねぇ…」
「大神先輩みたいなこと言いますよね」

わりい。と謝るとまぁいいんですけどね。なんて言いつつ、となりからくちん。とくしゃみの音。海風は肌を指すほどではないが冷たい。風邪を引くといけないな。と思いつつ、隣に視線を向けると鼻を擦っている姿があった。

「ちょっとごめんな」

そのまま俺はひなたくんの額と俺の額をくっつける。俺の体温は常に低めなことも計算しても熱ぽいような気がする。一之瀬先輩?とちょっと慌てた感じの声色で俺に声を投げるが、そんなので動じる俺じゃありません。顔面偏差値の高い翠にも慣れてるので、そんな後輩力高めにしても、効果ありませーん。

「ひなたくん、風邪ひきかけじゃないか?とりあえずここ体冷えるし冷えたらしんどくなるから、部屋を移動するぞ?。」
「有!ゆうたくん!」
「あぁ、千秋。」

有具合は?と聞かれたので寝たから平気だよ。と伝えるとそのまま視線は俺の隣にくる。飲み物取ってくるから、ひなたくん、ちょっと話があるからそこの通路からでも俺の寝てた部屋にでも連れてってくんない?セ・ン・パ・イ?。首をかしげて問いかけると意図を察したのか、千秋も気づいたようで、任せろ!とひなたくんを連れて、行く。ひなたくんの肩を叩きながら一番近い人気のない階段を通って俺が寝ていた部屋に向かっていく。あの背中は昔俺が諦めた背中なのに、どこか昔と違う。あいつも変わったんだな、と思いつつその背中を見送っていなくなるのを確認して、暖かい飲み物を注文しにいそいそと移動を開始する。やることは3つ。一年に見つからず奏太と連絡を取って、飲み物を取って俺の部屋が寝てた部屋に戻る。これだけだ。




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