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千秋が、図書室から本を借りてきて、ついでに人数分のコピーを焼いてきた。…どうやら、ガトーショコラを作ると胸を張ってるが、俺は一旦やめとけと声をかけたが、そのまま突っ走ろうとし始めるので、俺はもうその時点で失敗が見えた。こいつに何言っても聞かない、さすが点『守沢千秋』ぶれない、揺るがない。まじ強敵。深い理由もなくガトーショコラとか、もう俺が講師だったら頭はたいてるわ。翠がレシピを流し見してるのでそれを隣で伺ってみると、なんとかなるんじゃないかな…っていうか、小麦粉図る所からやるのやめて、ホットケーキミックスにしたほうがいいんじゃね?って俺は思った。

「何事も挑戦することが大事だな!まずはボウルに卵黄とグラニュー糖を入れるんだな、ざざ〜っと!」
「こら、計れおバカ!!」
「砂糖は半分残しておくってレシピに書いてあるでしょうが」

俺と翠で必死に止めれば、千秋は平然とそうだったか?って言いだしたから、俺、こいつに音読させたほうがいいって思った。そうじゃないと途中で切り上げてそう、…いや、もしかすると音読しても一緒かもしれないけど。千秋から計量カップと計りを奪って翠に渡す。おまえのがしっかりしてくれそうだよ。っていうか、たぶん計量は翠と忍に任せた方が速そうだ。千秋、お前何もするな。しいて言うならお湯沸かして。

「あんたに任せると不安だから、レシピを見ながら作れば失敗しないはずなんで、よけいなことしないでくださいね。」
「千秋、お前年下に注意されてるのか…。」
「はっはっは、二人とも信用がないなぁ。大丈夫だ、俺を信じて任せてくれ。」
「お湯も沸かせれなかったら俺はお前を人として疑うわ。」
「とりあえず、鍋に水入れて、沸かしてる間に、鉄虎と奏汰と千秋で刻んでもらっていい?」

指示を出せばわかったと頷いて、鉄虎と奏汰に声をかけ始める。その背中を見送るだけして、とりあえず安心した。とりあえず、翠一緒に狂を乗り切ろうな。って声かければ、翠はそうっすね。とだ返事が来た。鉄虎も奏汰もやることがわかったのか、頑張りましょうと楽しげに声を上げている。……とりあえず、俺も俺用っていうか、もっと簡略化できないかと思って、ホットケーキミックスの粉を一旦ボウルに入れて卵と牛乳を用意しだすと、とりのこされがちな翠が「えっと…仙石くん。俺たちは生地をつくろうか。」なんて忍に促しをかけた。忍は比較的手際がいいなぁ。とお思いつつ、俺はホットケーキミックスとチョコレートと戦闘を始める。千秋たちはガトーショコラ…おそらく失敗作になるだろうから別ルートの模索を始めるためにとっかかりとしてためしに作り始める。

ホットケーキミックスを混ぜてクッキーみたいにしてもいいなぁ。…あいつらにオーブンを使わせるのも怖いしなぁ。炊飯器ケーキ1ピースは原価が高すぎるし、いっそ揚げてからチョコレートコーティング…油だ。焔だ。駄目だ。俺たちが追い出しを喰らう。…はてどうするか、と材料に混ぜ込むかのように思考を練ってる間だった。背後、大音量鉄虎の声。

「うぎゃああああああ!?」
「な、なんだ!?」

それから爆発音と、焦げた臭い。……もしかしなくてもやってくれたな。鉄虎。思考と同時に、オーブンが爆発したとの報告が耳に入って、俺は頭をがっくりと落とす。繋がってるからできる芸当なんだけれども。とりあえず、一旦作業の手を止めて、音の方に向かうと翠と忍がそこで立ってた。

「鉄虎くん、火だけじゃなくてオーブンとも相性悪いの!?」
「一旦片づけるから、鉄虎、濡れ布巾作って。」

指示出しながら、オーブンの元を落とす。これで、万が一も防げるだろうけれども…。まぁ、状況は散々だな。…やっぱり俺逃げたくなってきた。もうやだ。流星隊。楽しいけど、紅朗させられてる割合多くない?

「オーブンを予熱するだけのはずなのに、何でボヤ騒ぎになるわけ?」
「…金輪際、俺の目の前で調理家電類を鉄虎に触らせないことを決めた、いいな。翠も忍も。」

二人の了承を聞いて、俺はオーブンの片づけを始めようと算段する。その間に鉄虎には洗い物をして貰おう。それなら壊さないだろ!!っていうほぼほぼ断定なわけなんだが。

「痛い!守沢先輩、腕が俺にガンガン当たってます。地味に痛い!」
「待っててくれ、ファンのみんな!日頃応援してくれてるみんなに感謝を伝えるためにも、必ず美味しいチョコを…」

……わかった、わかったからもういったん止まれ。あと、静かな奏汰が俺は怖い。何作ってるんだ?と言っても、いいものですー。しか返ってこないのが余計に怖い。もう、翠にひじ打ちすんな!俺がやり返すぞ!そう牽制しつつ、奏汰の様子を伺うと「できた〜」とうれしそうなんだが、その手に持ってるものは緑色…たぶん、あんまり聞きたくない気がする。

「奏汰、これはなんだ?」
「『みどりむししょこら』です〜。」
「…………緑虫ってユーグレナだったっけ…」
「一之瀬殿今はそれじゃないでござる!」
「………そうだったな……」

俺もう頭が痛い。なんで流星隊なんだろう、とぼやく。そうだよなぁ、今年の春に家まで三毛縞と千秋に来られて圧に負けてしまったけれど、反故してやろうか。とも思う。もう頭痛がしてきた。やだ。むり、俺も帰りたい。その場にへたり込んで、呆れるように落胆していると、『さばーしょこら』たべますか?と深海が皿を付きだしてきたが、それも遠慮しておく。翠が爆発しそうだし、もう、これ流星隊解散でいいんでね?っていうか。これ、チョコレートより胃薬の方が必要じゃねえのか?なんて思い始めた頃に、ノン!と言う声を聴いた。

「やめたまえッ!これ以上料理を冒涜するな!」
「……斎宮……」

頭に火がついてるような勢いで、斎宮が調理場に上がりこんで是認を叱り倒すような勢いで口を開き始めた。おい、こいつの保護者・・・ってお前が親の方だったな。

「先ほどから君たちは何をしているのかねっ!料理は一種の芸術だというのに、侮辱も甚だしいよ!」
「もっと言ってやってくれ。」
「なぜ、お前は言わないのだね!一之瀬」
「俺が言って全員やめるようなタマしてたら、流星隊なんて存在してねえよ!」

そう言い返せば、確かにそうだね。って言われたのも納得できねえけどな!この野郎。俺がいろいろと溜めこんでいる間に、斎宮は一人一人の欠点を指さしながら、しかも奇人同士で怒りあってる。ついでに、食材への冒涜には俺も結構納得してるのは、祖父母を頂点とした躾がされてるからというのもあるのかもしれない。いまだにプリプリ怒る斎宮をほったらかしにして、斎宮が飛び出してきたところから影片がこっちを除いてたので、そっちに寄って声をかけてみた。

「影片、説明してもらっていい?」
「お師さん、一気にまくし立ててもわけ解らんよ。おれたちも【ショコラフェス】に参加することになったんですけど、ついさっき決まったばっかり決まったばっかりやから、厨房の予約とかしてへんのですよ。」
「キャンセル待ちで訪ねて着たら、今だった?的な?」
「せやねん。理解が速くて助かるわ〜。ほら、お師さん出直そ?」
「ノン!このまま放っておくなど僕の美学に反するのだよ、守沢。そのボウルを渡したまえ。」

渡したまえって言いつつほぼ強奪の勢いで千秋からチョコレート湯煎していたボウルを奪う。それと同時にレシピはどれだね?と伺うから怯えた翠が差し出して、一瞬斎宮が思考してレシピを思い浮かべ直している。

「一之瀬…と、そこの背の高い君。とりあえずレシピの二倍量の小麦粉を測りたまえ。いいkね、1グラムたりともずれるのは許さないよ。」
「…なんで俺が…」
「斎宮は無駄も無駄も嫌いだしな、たぶん様子を見て、俺と翠が料理についてはまだまともそうだから。じゃねえのかな。とりあえずやるぞ。」

翠、小麦粉もってきて、器具を準備する。俺は?と千秋が言い出したので、とりあえず全員分勿論斎宮のも影片のもだ。斎宮は紅茶しか飲んでなさそうだけどな。…あいつ、全員分のコーラとか買ってこないよな?大丈夫だよな?そんな予想をしながらも、千秋を無理やり追い出してると翠が小麦粉を持ってきた。

「影片、何をぼさっとしている!出来損ないの人形でも粉をふるうぐらいはできるだろう!さっさと動きたまえ!」

……なんであいつ、後ろの影片の事まで見えてんだ?……斎宮、後ろに目でもついてんのか?



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