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もうすぐ俺の大事な試験がやってくる。基本的に千秋に秋まで俺絶対に体開かないからライブの仕事とってくんな!いや取っても俺は出ないからな!ととんでもなくゴリゴリに押してるので逃げる成功率は高い、絶対に逃げられない仕事に対して一年生使ってくるの狡いぞ!千秋。
それでも俺は一度千秋を撒いて教室で勉強を進める。俺の大事な試験が8月にあるのでラストスパート寸前。ノートと参考書を開いてがりがりしてると、背中を叩かれた。

「ん?あんず?」
「お疲れ様勉強?」
「そう、どうしても受けたい試験があってそっちに専念。千秋にも喋ってるけどアイツ俺をまだ誘ってくるの」

諦めなよ。とあんずに言われるが、試験終わるまでは無理だよ。と返事をする。そんな一之瀬くんにはい、差し入れ。と冷たい飲み物が渡された。あんがと、と返事をすると、ここ教えてほしいと勉強を問題集を差し出される。どれどれとみると先週やった授業内容だったのを思い出して、ここはな。と解説をしていると、遠くから足音が聞こえた。俺は千秋かと思って撃退用の高出力の改造ペンライトを取り出す。

「フッ……。闇に生き、闇に死ぬ。仙石忍、ただいま見参。」
「ほい、あんず。」
「あうっ、ペンライトを使用しないでほしいでござる、転校生殿!まぶしいっ、っていうか熱い!一之瀬殿もやめてくだされ!拙者の髪は黒いから熱をよく吸収するでござる」

焦げる焦げる!と叫ぶ忍を助けるために高出力の改造ペンライトをあんずから奪って、悪い千秋だと思ったからつい。と謝り冷やすために鞄からペットボトルを取り出して忍の頭の上に置く。

「死ぬかと思ったでござる!一之瀬殿!隊長殿に対して容赦ないでござるな!まじパねぇでござる!」
「お前らもそうだろうが。」
「拙者、徹夜明けなのでまぶしいのはホント勘弁でござるよ。闇の奥に沈んでいたい、具体的に言うと寝床に……」
「ん?またアイツなんかしてんの?」
「で、仙石くんどうしたの?」

しびれをきらしたのか俺の千秋撃退用のペンライトを俺からこっそり奪って脅しかけてるので、どうどうと声をっけて落ち着くように諌める。こら、と高出力のペンライトは長時間照射してはいけません!壊れるし、掴んで奪うのも熱いし!!熱いままのペンライトを鞄の中に仕舞いこむ。
大変失礼した、さっさと用事を伝えるでござる!拙者も上級生の教室に長居はしたくないでござる。緊張しちゃうから転校生殿も一之瀬殿も少し顔を貸してくれぬか?御迷惑でなければ助太刀を頼みたいのでござる!手伝ってほしいことがあるのでござるよ、無理にとは申さぬ!お、お暇であればという感じでござるけど〜?
真剣な顔をした忍に俺は「30秒待って、式書ききるまで待って。」と伝えて、ぐるっとひっくり返って、ノートにここまでと書ききって鞄を持つ。逃げないの?と言われたけれど、一年にお願いされちゃとんでもないこと以外は断らないことにしてんの。

「俺だけ?あんずも?」
「今回は拙者が日頃からお世話になってる衣更殿ではなく、転校生殿か一之瀬殿に頼みたいことが有るのでござる。」
「あー千秋止めんの?」

いいよー。次は絶対にライブの仕事以外だったら逃げるからね。翠と鉄虎と忍の3人で来られると俺も太刀打ちできないかもしれないけど。その裏でこっそり忍が正直こんな面倒くさいことには巻き込みたくない。と言うのを俺は聞き逃さなかった。「おい?」と問いかけると、あうっべつに転校生殿や一之瀬殿には迷惑かけても心が痛まないということではなく!今回はほんとうに、お二人に頼むしか『すべ』がないでござる!拙者を哀れと思うなら、どうかご協力を。
「いや、そういわれなくてもお前ら千秋を止めれそうにないから行くつもりだけど。」なんていうとめちゃくちゃ泣きつかれた。いや、慣れてきたから全然いいんだけどさ。

「あんずはどうする?なんか厄介な感じがするけど、来る?」
「じゃあそうしようかな。」

AV室に入った瞬間に、満面の笑みで「隊長殿〜!任務達成でござる!」と言われた瞬間に俺も騙されたとか思ったよ。うん。絶対仙石からは逃げ切ってやる。そのための身体能力だよ。三階まで逃げて飛び降りてやると心に決める。見事に転校生殿をおまけに一之瀬殿も見つけたので連れてきたでござる!褒めて褒めてっ!と純粋に喜んでるから俺も何も言えなくなった。

「一之瀬くん、」
「大丈夫俺、次から仙石のお願いは聞かないことにした。」
「なにを相談されてるのでござるか?ささっお二人ともむさくるしいところでござるが、ご遠慮なく入室めされい。」

仙石の誘導に呆れながらも、俺は部屋に入る。スリッパに履き替えていると、鉄虎がもう耐えられないッス!やってらんないッス〜!と走り出してった。外は雨降ってるし気をつけろよー!と俺も声をかけておく。聞きはしないだろうから、俺もあとでおいかけなきゃなぁ、と消えてった背中を見送って中に入る。入り口近くで首を振る忍がいたのでどうした?と声をかけるがさっぱりわからん。と言われた。

「有!来たのか!」
「…俺勉強で忙しいっていってんのに、一年に迷惑かけんな!千秋」
「お前も見ればきっとわかる!」
「お前昔からその話しかしてねえじゃねえかよ。ってかすでに迷惑かけてんじゃねえか」

高峯に肩車してほぼ天井に頭を打つか打たないかレベルの高さの千秋をげんなりと睨みつける。千秋は仙石に笑いかけてるが、翠がヘロヘロになってきている。もうおバカちんと千秋に言いつつ。翠には俺が言いくるめるから降ろせと言う。放り投げるぐらいの感じで翠がすんなりと投げ下ろす。降ろしても、千秋はすんなり受け身をとってすぐに立ち上がり、『部長』じゃなくて『隊長』と呼べと抗議する。助けてくださいという視線を受けて、俺は千秋を怒る。

「さっき投げ飛ばして始末すればよかった。めんどくさい」
「面倒を避けるな高峯!困難を楽しむがいいっ!苦難を愛するのだ!」

高笑いをする千秋の頭をはたく。ばしっと良い音が鳴るし、お前を殺人犯にしたくないからやめとけと翠にも諭す。諭すと、千秋が余計に出てくるので俺はしゃらっぷ!と一声で黙らせる。

「目の前のお前が苦難だよ。」
「じゃあ俺を愛してるのか!有」
「はいはい。それでいいから、なんで俺たちを呼んだの?鉄虎逃げ出したしそっちも追いかけるべきだと思うけど?」

うむ!そんなことより、一旦状況を説明しておこう!と千秋が言い出すと翠が近くの椅子を千秋撲殺と言わんばかりに支度しだすから俺はそっと翠の気持ちに同意しながら、落ち着けと言い聞かす。なんで俺、千秋のもとで流星隊してんだろうな。もう、最後に手を脱いて千秋に渡した一年前を後悔した。

「俺は高峯に肩車してもらって、天井にあるブレーカーなどを弄ってるところだ!」
「あー高さが足りなかったのね。はいはい。高峯もおつかれさん、休んでていいよ」
「ありがとうございます一之瀬先輩。俺この程度の事しかできないから、俺がでかいことで役立ったなら、光栄ではありますけど。」
「なぜ肩車をしてるのかは判然としたでござる。しかし、どうしてブレーカーなどを弄っておられる?」
「南雲が何をどう間違えたのか、この部屋を停電させてしまったからだ!」

ついでにAV機器などをこわしてしまった、あいつは不器用なのだ!なので仕方なく、とりあえず照明だけ復旧させた!いや復旧させた!じゃなくてさなんで千秋は鉄虎に決めたの!?この部屋の機器なんてたまに3年でも壊す奴ざらにいたじゃん!
そうだったな!と笑うがおいこの修理費『流星隊』持ちだったら、レッスン室一か月分ぐらいぶっ飛ぶんだけど。と俺は肩を落とす。千秋にバイトさせようと心に決める。

「そうして電気系統を回復させつつAV機器を修理する傍ら俺が『ある空想特撮シリーズ』の第一話から巡番にすべての動きと台詞を再現していた!」
「……で。南雲は逃げたと。」

その通りだ!しかし大丈夫だ、あいつは必ず戻ってくる!俺はそう信じている!と胸を張る千秋にため息しか覚えない。一年にこれを処理させるのは無理だと思いながら、俺は解ったから話を聞いてやるから(ただし返事は適当)なんて言ってとりあえず、修理を始めてくれ。背負ってやるから。

「あいつが戻って来るまでは、また特撮番組の動きと台詞を再現していよう!次はどのシリーズにするかな〜」
「先に電気系統!!千秋!!テン・ショウインシリーズはいいから!いい加減にしろ!殴るぞ!」
「わかっているな、高峯。ワイヤーアクションなどはお前が俺を抱っこして再現するんだぞ!」
「荒縄を首にひっかけてお前のきらいなもんと一緒にお前をダイブさせてやろうか!!」
「わかった、有。それだけはやめよう」

ふ〜む?よくわからんが、相変わらず『流星隊』はにぎやかでござるな〜!なんていう忍に俺と千秋がんなわけないだろ!!とうっかり千秋とおんなじテンションで怒鳴ってすまん。とりあえず、俺は鉄虎見てくるから、仙石、千秋がしっかり機器修理するのを見ててもらっていい?千秋、お前こんなこと続けてたら俺また引きこもるぞ?と念を推しながら、俺はAV室を出て行った。……なんか千秋顔色悪くなかった?……気のせいか。




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