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遅刻ギリギリに教室に滑り込む。あっ、あっくん!と言われて、明星が飛び込んでくる。おい、やめろというが口だけで、そのまま明星を引きずって俺は自分の席に座る。ふーと一息つくと、ねーねーあっくん。俺の肩を揺さぶるので俺は甘んじで受けておく。

「なに、酔うからやめてって、明星ー。」
「お泊り会しようよ!」
「……ひだかー!前説してー。」

用件だけ言われても俺わかんないって。明星、お前は言葉が足りなすぎるとたしなめられながら、氷鷹が細かく砕いて説明をしてくれる。つまりだ、思い出作りのためになにかしよう!と言ってくる。なるほどわからん。なにかが不具体すぎる。そこはみんなで話し合って決めようよ!旅行とかもウッキ〜がだしてくれたんだよー!と俺の肩を揺する。まって、視界ガクガクしないで。と訴えると、乙狩が明星を離してくれた。言ってくれてるなら俺に言うなこの野郎。俺は家でゴロゴロしてるのが至福なの。決まったら最低限は出るけど、それ以外は干渉しないでね。と念を押すと、やったー!全員で思い出作りだー!とか言い出すのでへいへい。と俺は返事して自生の腕枕で安眠をむさぼろうとする。あんずに起こされても俺は無視を決め込みおやすみ5秒で夢の世界へ。ってしたが物の3分で明星に起こされて、「あっくん!ライブしよ!」という返事に俺は何も考えず「はいはい」と返事をして、自分で発言した言葉に耳を疑った。今何って言った!?

「一之瀬くん!ありがとう!」
「……あ、いや……そうじゃなくて、だよ。あんずさん」
「うんうん、一之瀬くんなら出てくると思ってたんだよ!」

……これ、訂正できねえな。と俺は後悔するのだった。ライブかーそうかー。めんどう、とかちょっと思ってるし、家にかえれないのかーと俺は頭を抱えた。そうこうしてると佐賀美せんせがやってくるので、こんどこそ安眠を堪能できるのであった。俺はその日ぐーすか寝て昼休みに飯食って、放課後に逃げてから勉強をしてると千秋に引っ張られてレッスンに引きずり出された。……最近逃走成功率低いから本気で家で勉強した方がいいのかもしれない。とりあえずひたすら走ろう!とかっていう千秋に俺と一年三人でスケジュールの無理やり変更を勝ち取り、とりあえず楽曲練習に切り替えることに成功した。俺明日休んでいいかな、疲れたよ。もう、まじ。千秋。はぁ、とため息を吐くと高峯に大変ですね。と同情された。ほんと俺流星隊なんだろうね、って今めちゃくちゃ思うよ。これからもっとブルーとか言ってると、生きてください。と慰められてるけど、俺君より二つ上だよな。とか思うとちょっとセンチメンタルになってきた。

「ほかの皆もバルくんに強引に誘われテ、一之瀬くんは間違いなく強制的に、仕方なくライブをすることに賛成したって感じかなァ?」
「あっくんは、返事してくれたよ!ね!ね!」

がっしがし頭を揺さぶられて意識が浮上した。どこまでが夢だったかわかんねえ。いや、とりあえず今夏目の話は覚えてる。うん、どこまで夢だったっけと思い浮かべる。あー今の聴覚だけを奮い起こして、何をしていたか。そうだそうだ。と思い出した。「……寝ぼけて返事したけどな。」と言葉を出すと、氷鷹がフォローに回る。

「いや、そうでもないぞ。確かに明星の思いつきで始まったようなものだが、最終的にはみんなライブをすることに納得している。」
「うん、思えばクラスのみんなで何かをしたことってそんなになかったからさ。進級してクラスが分かれる前に一致団結して何かを成し遂げることができたら、すごくいい思い出になると思うんだよね。」
「フゥン、多勢に無勢だなァ……わかったヨ、ボクも参加すればいいんでショ」
「ほら、有。逆先もこういってるんだ、諦めろ。」
「なんで、俺に振るかなぁ。決まった事には逆らいませーん。三毛縞とそういう約束だしー。」

やれやれと首を振る。俺は比較的諦めることには慣れてるし、諦めたらあとはできることだけを拾っていけばいいし、言われたことをやりながらどっかで天井。と思っているので、やれと言われたら最善を尽くすし、お仕事だからね。と割り切っている。明星にやった!よぉし、今日の放課後から!と言いつつ俺をヘッドシェイクしてるので、俺はあと3回揺すったら怒る。と思いカウントダウンして、明星の額にヘッドバットを決めてやるのだった。

「おまえ、絶対!許さない!!」
「イタタタタタタ!」
「あっくん!」
「遊木、お前代わりに毎日頭揺さぶられたい?」
「それはちょっと……」
「お前もろう人形……じゃなくて、ヘッドバットしてやろうかぁあ!」
「えええええ遠慮します!」

あっそ。と俺は興味を無くして、明星から手をはなす。もう、俺この学年、いやもうあとちょっとで終わるけど。とりあえずこのヘッドシェイクデイズが終わるなら俺もう今日はとりあえずこのあたりでいいです。そのまま後でレッスン場な!と言って俺は一目散に逃げ出した。いいんだよ、おれちょっともう別に単位とかどうでもいいから。高卒資格は持ってんだもん。




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