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……そもそもあんずの携帯に連絡を入れればいいのでは?と気づいたときには周りには誰も居なかった。どうやら登良もはぐれた様子で。登良は人ごみから離れ思考する。一、大人しく迷子センターを探す、ニ、携帯に連絡を入れておく。三、その場待機。さっと出した選択肢に決定するかと迷っていると、目の前で手をひらひら振られた。

「あ。やっぱり三毛縞くんの弟くんじゃん!」
「羽風先輩……!神崎先輩が探してましたよ。」
「男に探されてもなぁ…ねぇ。あんずちゃん見てない?」
「……あんず先輩は見てません。」

なぁんだ。と羽風は一瞬落胆するが、それでもさっと切りかえてじゃあね。と手を振ってあんずを探しに動き出すので、登良は神崎を回収させるために羽風の腕を掴んだ。え?と声を出す羽風に登良は神崎先輩のところに。とにっこり笑う。俺、それよりあんずちゃんのほうがいいんだけど。と言う羽風の言うことすらすべて無視して、神崎のところに向かおうとした時、羽風があっれぇ!?。と声を漏らした。思ったよりも大きな声で登良は振り返ると、羽風が人ごみの多い水槽を指差した。

「どうしたんですか?」
「いや、あそこ。」

指先をたどると、水槽の中で優雅に手を振っている深海奏太がそこにいた。かおる、こんなところで『きぐう』ですね、と笑って手を振っている。水槽の中とは思ったよりも違うところにいて登良は、ぎょっと目を見開いた。掴んでいた手がするりと抜けて羽風が深海に寄ってかつかつと歩いていく。ガラスに引っ付くかぐらいのところで、足を止るので登良はそっちに寄る。

「いやいやいや?何してんの奏汰くんっ、当たり前のように水槽の中にいるけど!前から疑ってた通り君は分類としては『人間』じゃなくて『海の生き物』だったのかなぁ!?」
「ふふふ、いちおう『にんげん』のつもりですよ、『うみのいきもの』じゃなくなったからおよげないんです。」

地上で生きていくために大事なものをささげた人魚姫みたいですね。と聴覚がとらえて笑って立ち上がる。違うと否定はしたが誰にもそれは拾われなかった。羽風が怒りながら深海に言葉を投げる。が、深海はいつもの通りにのらりくらりと笑っている。ため息をついてから、いつもの俺を取り戻すから。と羽風は深呼吸をしてるし、くすくす深海が笑っている。

「あのね、奏汰くん。」
「はい、なんでしょうかおる?」
「ごめん、腰を据えて会話する前に、まずこっちに出てきてくれるかな、さすがに注目を浴び始めてて恥ずかしいから。登良くんもいいよね?」
「えぇ。」

そのままあとで兄に連絡を入れねばと思いすぐに内容だけをメールで送っておく。
深海先輩。水族館。みつけた。
これだけだが、察しのいい兄ならば来るだろうと算段を付ける。もしくは来て捜索を開始しているだろう。分厚い位アクリルを挟んで会話するのを聞きながら登良は送信完了画面になってるのを確認して閉じる。

「こまりました。むこうの『いいぶん』もただしいので。はなしあって、おたがいの『だきょうてん』をさぐってるところです。」

深海の言葉を聞いて、閉じたばかりの携帯を開いて、必要そうなことを送っておく。察しのいい兄はもしかすると先に動いてるかもしれないが、これぐらいならなんとかしてくれるのではないか、と判断して、またメールを組み立てて送れば、了解と書かれたメールが送られてきた。その了解に何が込められてるのかわからず登良は首を傾げることにしておいた。ちらりと深海を見ると余計な手出しはいらないと言わんばかりに深海は自分の唇に人差し指を立てていたので、それ以上動くなとも取れて登良はそっとポケットに携帯を滑らせる前にひなたたちに迷った。羽風先輩とは合流できた。あとで混ざる心配しないで。とだけメールを送っておくことにした。




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