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ジェットコースターや急流すべりみんなで騒ぎながら、乗ったのはいいがはしゃぎすぎたと登良は後悔した。

「ジェットコースター楽しかったんだぜ!」
「だね、」
「もう一回乗ろう?そんで次はあの空中をぐるんぐるん回る椅子に乗ろうぜ!」
「光、待って。休憩しよう。」

三半規管がやられそう。登良がそう告げると、友也が水を差し出したので遠慮なく登良は受け取り、近くのベンチに腰をかける。登良って苦手なものあったんだな。と言われて、三半規管が弱いのは今はじめて知ったよ。眉を下げてながらそう登良は返答する。創は大丈夫かと聞くので登良は隣を見ると生まれたての小鹿のように足を震わせている創がいた。

「創、座る?」
「俺、冷たいものでも買ってくるよ。アイスとジュースどっちがいい?」
「大丈夫です!ひとが多くてまっすぐ歩けなかっただけです!」
「創、仲間でしょ。遠慮しないの、俺も休みたいし。」

ついでにアイス屋台あるから、そこにしよう?と投げ掛けて四人で何にするかと話し込む。アイスと言うよりもパフェみたいなサイズでどうするかと思考する。たぶん食べたらお腹壊しそうだとか思いつつ、ちらりと光を見るとショーケースに張り付かん勢いで覗きこんでいるので、微笑ましく見ていると創が仲良く分けて食べませんか?と言うので、登良は頷く。

「自分ひとりで食べるよりも幸せを共有できるから好きなんですよ〜」
「いいぜいいぜ、アイスは創ちゃんが選んで!」
「う〜んじゃあバニラで」
「定番だし、外れがない味だよな。」

すみませんバニラ一つください。手早く登良が店員とやり取りして支払いを済ませて友也が受けとる。近くで見ると尚も大きいサイズで、一人一つにならなくて良かったと登良は思う。みんなで騒ぎながらアイスを回して食べる。日差しに当てられて熱かった体が冷えていく。みんなで美味しいと言いながら食べると尚も美味しく感じて自然と笑みが溢れる。

「光、食べ過ぎてお腹を乞わさないように気を付けてね」
「勿論!」
「お前アイスを一気に半分ぐらい食べたな?登良口開けろー」
「ん、あー。」

口を開けば追加のアイスが押し込まれる。登良はモグモグ咀嚼する。大きな塊だったので、片側に押し込みながら、独特の甘さを味わいながら甘くて美味しくて表情が緩む。登良は美味しいね。と、創に言うとですね〜。と、みんなで食べ終わらせる。これからとうする?とはパンフレットを開きどうする?近くの電工掲示板には、平然と40分かかると書いてあった。このまま乗れば下手すると帰りの時間に影響してくるだろうし、明日もあるから、とにらめっこを続けると友也が登良は何に乗りたい?とパンフレットを、覗いてくる。

「光が言っていたアトラクションは、40分待ぽいね。あそこにあるコーヒーカップなら並ばずに乗れそうだけど乗る?」
「いいんじゃない?そのあとあとグロッキーかもしれないけど、光は好きそうだね」
「オレはけっこう好きだぜ!真ん中にあるハンドルを回すとぎゅいんぎゅいん回って、たのしいだぜ!」

よし、わかった俺写真とるから、三人で乗ってきなよ。そう提案すれば、そっちのほうがいいかもな。顔色まだ悪そうだし、無理はするなよ。と友也の声もあり、登良は入り口で三人を見送る。そこから登良は脇に避けて、柵にもたれ掛かりながら中に入った仲間を眺める。ジェットコースターに揺さぶられた反動はまだ抜ける気配はない。とりあえずなずなに見せるように写真を撮っておくために、コーヒーカップに乗り込んだ彼らを一枚納める。いえーい!と元気よくピースが向いたので、動画にしておこう。ぴろりん、と機械音がしてスマホに仲間が写りだす。
軽快な音楽と共にコーヒーカップが動き出す。きゃあきゃあ言う声をスマホが拾う。光は回すことに集中して楽しそうに笑っているし、友也は創を心配している様子が伺える。創は最初はおっかなびっくりしていたのだが、慣れて光と一緒にハンドルを回している。時折登良にピースをしたりするのを登良は手を振りながら返事をしていると、カップたちは緩やかに動きを止めていく。スタッフがまっすぐ創たちのところのロックを解除して、出口に誘導するので、登良は録画を止めて、出口の方向に向かう。

「おかえり。」
「楽しかったんだぜ!」
「見てたよ、あとで動画送るね」
「撮ってたのかよ。」

に〜ちゃんにも見せようと思って。下見に行ってもらってるし、居ないのは寂しいもん。そう伝えれば、みんなで写真を撮ろう何て言う話になって、近くの人に声をかけて四人で一枚の写真を撮る。一旦連絡用SNSに張り付けておく。みんなてお揃いの待ち受けにしよね。だとか話をして、一度なずなと合流しよう。と話が出る。

「ぼく、に〜ちゃんのスマホに……あれ?」

創の言葉が止まって登良はスマホを触っていた手を止め得て、顔をあげると人ごみの中にひなたの姿があった。少し人目を気にしてるのかキョロキョロしているのが逆に浮いて見える。登良はふらりと足を進め人ごみを潜り抜けてひなたの、腕をとる。ヘッドホンはピンク、ひなたで、間違いない。確信する。

「あ、登良くん。あ、アタイは尾行してたわけじゃないの!たまたま、遊園地のチケットをもらって?それで遊びに来てただけだから」
「ゆうたが心配?」
「アタイは遊びに来てるの!」

そう、じゃあ創も友也も光もいるからおいでよ。と声をかけて手を繋ぐ。人ごみを通り抜ければ、お。来た来た。と口々に言い出す。ひなたは遊びに来てたんだって。言われたままの内容を伝えれば、へぇ。と友也が意味ありげな笑みを浮かべるので、登良は先程の一連の言動を統合して思考をまとめて判断する。

「で、ひなちゃんは何してるの?、かくれんぼ?」

まっすぐキラキラした瞳に押されてひなたがたじろぐ。目線が泳いだのを登良は見逃すことはせず、にっこり笑うだけにとどめる。弟思いのひなたのことだから、知られたくないのだろう。登良は黙っておこうと思ったのだが、ひなたは弟が頑張る姿を見に来たと言う。照れくさそうに頭をかいて喋っていると、ゆうたが移動を始めたらしくひなたはそれを見てそそくさと移動していった。兄と言うのは、どこまでも世話を焼きたがるものだと思うのは、自分も兄であるから共感はできるが、ひなたに関してはいささかやりすぎなのでは?と思う節がある。兄はやりすぎだが、まぁ去っていくのを見送りながら、小さくなるひなたの背中を見て登良はそう思った。

「行っちゃいました」
「あいつ、なんであんなこそこそしてるんだ?普通に声をかければ良いのに。」
「きっと、ひなたやゆうたにも事情があるんだよ。兄には兄の、弟には弟の。」
「そっか、登良は真ん中の兄弟だもんな。」

兄の気持ちも弟の気持ちもわかるんだよなぁ。と小さく呟けば、俺は妹しかいないからわかんないけど、そういうもんなのかな。と友也が首をひねるので、登良はそういうものだよ。と適当にはぐらかしておくことにしておくし、たぶんわかんないけど。あんまり言わない方がいいかもね、と苦笑を浮かべるのであった。



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