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創と光がパタパタと走って帰ってきた。そんな頃に登良の準備は整った。息を切らせて、創が友也を見た。登良は二人に水のボトルを差しいれる。創と光が受け取って半分ほど一気に飲み干して、「『盗品が』見つかったって本当ですか!?」と声を上げる。登良はそれを聞いて、ステージ脇に置いた箱を指差した。

「あれが『盗品』なんだぜ?」
「合図するまで開けない。光。紐解けちゃう」
「中身は何なんだったんだ?」
「内緒。」
「登良、行こう」

返事をすると友也が舞台に出て行った。登良は、合図したら二人で持って来てほしい。からそれまでに息を整えてて。と伝えて、登良は友也の背を追いかけて出て行った。

「失礼します!まだ、今日のライブは終わってませんよねっ?」
「あらあら、探偵さんのご到着よォ、アタシたちも一巻の終わりかしら?」
「探し物は見つかったの?」
「はい、きちんと。」

間違ってたらまだ俺たちの出番じゃなかったんだって、大人しく退場しますから。そういいつつ困ったように笑った友也に、瀬名がにじり寄った。友也は一瞬止まって、じっくりと顔を見る。
ふぅん、予想外かなぁ、ちょっと。『Ra*bits』ごときが俺が丁寧に隠した『盗品』を……宝物を見つけ出しちゃえると思えないねぇ。出してよ、見つけた『盗品』をさ。証拠もないのに悪者だって糾弾されちゃ、立つ瀬がないからねぇ。俺たちを怪盗として犯人として立件したいなら。それに足る推理と、証拠を見せてよねぇ?

「はい、よろこんで。」

創、光。と声をかければ、ステージに二人が大きな箱を持って入ってきた。ウソでしょ、と鳴上が声を上げて眉をしかめる。登良は『Knights』の四人をじっくりと見つめる。「えっ、どうして見つけられたんですか!?」 なんて言って朱桜が一瞬視線を大きく壺まで動かしたのを登良は見逃さなかった。司の視線の先を確認してから、そこなんですね。と言葉がこぼれる。凛月の前を通り抜けて瀬名の前を横切る、ステージ後ろにあった壺の元まで歩いていく。壺の中に小さな箱が入っていた。迷うことなく壺から取り出して掲げた。

「友也、あったよ。ごめんね。嘘つかれたからついちゃった。」
「クッソガキが…かさくん!何動揺してんのさ。」

順番は前後しましたけど。でもきちんと推理はしたんですよ。最初に校内SNSで調べるチームと、歌詞から推理するのと、鳴上先輩の走ったルートを追いかけること。そうすることで最初は登良が鳴上先輩の嘘に気が付きました。ユニットの衣装に大きな理由がない限りポケットはつかないのに、鳴上先輩は何ももってなかった。とか。登良に言われるまで気づかない矛盾点がたくさんありましたね。どれが嘘かはわからないので、今回実際にルートを走って。
友也の解説を聞きながら、登良はひっそり小さく息をついた。外れてたらどうしようとも考えていたが、朱桜が大きく視線を向けてくれたから察することができた。

「登良くんは解っててやられたのですか?」
「ううん、でもステージの上にあるのは解ったよ。」
「Marvelous、とても感激しました。」
「そんなことないよ。」

俺ずっと友也がいなかったらぐだぐだだったもん。友也がいなかったら、俺は光と創をどうやってしか考えてなくて、謎を解くなんてできなかったもん。ふるふると首を振ると、そんなに卑下するのは自分の品格をひいては『Unit』の品位を下げますよ。と言われて、登良ははっとした。下げているのだったらどうしよう、と考えてしまって青ざめる、いえいえそこまで考えなくてもと司に言われて、登良は小さくそうだねと返事をする。今回の瀬名先輩の謎をほぼほぼ解いてしまうなんて私は驚きました。登良くんは素晴らしいですね。と司と話をしていたが、瀬名が司の背中を掴んでバックに下がっていく。

「ほら、かさくん下がるよ!」
「瀬名先輩!痛いです!」
「登良ちゃん偉かったわね!適当に走ったのよく覚えてたわね。」

叩き込みは兄で慣れてるのでと言ってのけると、どんな生活してるか想像したくないわね。と言いつつ鳴上が後ろに下がっていく。登良、と呼ばれて音の方を振り向くと友也がお前のおかげだよ。と飛びついてきた。一瞬よたりとするがしっかりと受け止める。そのまま光が抱きついてきて登良が支えきれずに尻餅をつく。慌てて謝りながら二人が立ち上がるのを見上げながら、登良は咎める。

「光友也、体格差」
「ごめんな。でも嬉しくって」
「登良ちゃんが楽しそうだったんだぜ!」
「友也が嬉しいなら俺も嬉しい。」

光と友也が手を差し出すので登良はその2本の手を取ってゆるゆる立ち上がる。友也、おかえり。と伝えるとなんだよ今更。と怪訝な顔をされる。登良はそれでも気にすることなく、「友也が戻ってきてくれたから、おかえり友也。」嬉しそうに笑うその表情に恥じらいが少し入っているようで顔が少し赤い。女の子のように笑う。いつものような困りを含まない心の底から嬉しくて仕方のない笑顔だとわかって、つられて友也も顔が赤くなった。

「あんたたち、お客さんを退屈させないで喜ばせなさいよ。」
「そうですね、はーい。ほら、友也。全力で歌って踊って、勝ち誇ったらいいんだよ。」

俺のおかげじゃないよ。友也が居たから勝てた。俺たちには友也がやっぱりいるねって思うから、一緒に頑張ろう。と登良は友也の背中を叩く。胸張って歌って疲れたら俺たちがみんなでサポートする。今までもそうしてきたから、一緒にみんなで進もうと声をかけて、登良は創の元に向かう。
友也はそんな登良の背中に助けられたな、と感慨深くなりながら、ライブの音が聞きなれた自分たちの歌に変わるのを聞いて慌てて持ち場につく。




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