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ここまでに四日が過ぎた。友也も復活はしたがなずなにより、三日ほど休養することと指示がおりてるのでライブには参加させない方向に落ち着いた。ライブは登良たちが謎が解けずに時間が時間だけが過ぎてった。ライブの中身を思い出して登良は振り返る。一曲目を終わらせて、謎を解き始めると、動揺している創と、光に振り回されてる方が多かったと思い返す。友也にいつもこんなことさせてたんだなぁ、とひっそり反省しながら教室の自分の机に向かって紙を広げる。今までのライブの謎を広げながら、取り留めないことを片っ端から書き連ね、思考を広げていく。毎日のライブの一曲目に謎をちりばめているルールなので、歌詞から拾うことから始めようと算段する。
そもそもの『盗品』というのは何だろうか、と考えだす。歌詞から探せればな、と思いつつ覚えてる限りの歌詞を広げる。集中して書いていると、一つ不思議な単語が出てくる。眉間にペンを当てて思考の海に飛び込む。心当たりはないものかと、携帯を開く。校内SNSの募集されてる『S3』にヒットする。それを書き出して首を傾げる。なんだろう?と詳細ページをタップして詳細を読み解いていると、人の気配が遠くからやってきた。音を拾って、首を傾げていると、「登良、ごめんな!」という友也の声と蝶番の音が聞こえた。驚いて入り口を見ると、友也を先頭に立って、その後ろに光と創が立っていた。登良は驚いて友也を見つめた。友也が登良を見ながら歩みをすすめて、目の前に立つ。

「今日から俺も復帰するんだ。光と創は大丈夫だったか?」
「…………ううん。俺じゃだめだったよ。やっぱり友也じゃないとだめだったよ。」

登良は「負担をかけてたね」と謝罪を口にすると、改めて友也も頭を下げる。登良は大丈夫だと告げて、作戦会議をしよう。と登良は口を開く。今回のライブの詳細は大丈夫?と登良は問いかけると、に〜ちゃんから概要は聞いたと言われて、登良はほっとする。
友也くんもまだ万全じゃないですし、一旦作戦会議を開きませんか?と創が口を開いたので、そうするか。と友也が登良の横に座る。それにならって光が机をガタガタ動かして登良の前に腰を下ろす。お話するならお茶がいりますね。と創が嬉しそうにお茶を入れてきますと部屋から出て行った。

「もう5日目だろ?どうなんだ?登良」
「……ほぼほぼ進んでない。」

今ずっと考えてたけど、あんまりよく解ってない。と書いた紙を差し出す。光が目をキラキラとして登良ちゃんすげぇ〜、とガタガタ机を揺らす。おいこら、と友也がたしなめつつ、登良は書類が飛び散らない様に抑え込む。はぁと友也がため息を吐くと、創が部屋に帰ってきた。光の横に座り、人数分のコップを広げて紅茶を入れていく。はい、どうぞ。と創は配って、なにの話だったんですか?と問いかけられる。こういう話だったんだよ。と言う話をして、作戦会議ですね、とにこやかにいいつつ、登良は渡された紅茶にお砂糖とミルクを入れて混ぜる。

「何日かやって要領掴んでるんなら、登良を主に据えてやってみるか?に〜ちゃんも入ったり入らなかったりだし。」

情報は全部一括した方がいいでしょうね、と創が頷きつつお菓子まで配りだしている。考えながら、登良は眉をひそめて、書いた紙を再度眺める。今までの【ミステリーステージ】を考えると、そうなんだろうか首をひねる。

「最後の30分は友也と一緒に考えよう。」
「じゃあ基本的に、創と光で移動して、謎とかを全部収集してもらう方向にしよう」
「光くんの足に期待ですね」
「任せろだぜ!」

光も自信満々に胸を叩く。創もがんばりましょうね、と頷いている。平常運転にもどったようだと思って、登良はそっと息を吐く。友也がその様子を見て、また考え事か?と問われる。登良は言葉を濁しつつ曖昧にした。実際に死んだらどうしようとかも考えたけれども、佐賀美の言うことでそういう思考は安心してやめたのだ。と伝えると登良は心配で考えすぎだよな、と友也が笑う。そのまま他愛ない話をしながら、打ち合わせを済ませて方向性を固めてから、準備を始めようかと話をする。

「よぉし、じゃあ行動開始だぜ!」

何をすればいい?どこへ向かえばいいんだっ?友ちゃんのリハビリもかねて、まずはレッスン?とりあえず、ダッシュダッシュ〜。声を上げて、走り出すので登良が首根っこを掴んで止める。友也も、『とりあえず』で動くな。と釘を刺して、友也が今日の予定を問いかける。

「すごいなぁ、登良くんも友也くんも。光くんの手綱ちゃんと握れるんですよね。ぼくいつも反応が遅れちゃうんです。」
「光に紐でもつける?」
「それはちょっと……。」
「何かもう、慣れた。変態仮面に比べれば、光はまだ行動がシンプルだしな。走り出す前に首根っこを掴めば済むし。最悪登良に走ってもらう。」
「走るのは慣れてるからいいんだけど、絶対に動かせないのが、今日の【ミステリーステージ】一曲目。そこでバックダンサー。」

言葉を継いで創がに〜ちゃんもその時間には戻ってきてくれるでしょうし、それまでは自由って感じなんですけれど、どうしましょう?創の声を聴きながら、時計を見ると残りはおよそ2時間程度、レッスン室を借りるにしても手続きの間がもったいないかな、と呟く。『Ra*bits』の軍資金も最近はそこそこあるけど、やっぱり節約したいしな。じゃあ校門前の練習スペースにする?そうだな、そうしよう。
友也が【ミステリーステージ】のダンス練習をしたいと声を上げるので、登良は机の上に広げた紙に数字を振る。その順番に並べかえて、クリアファイルに入れなおす。とんとんと整えて鞄に収めこむ。登良は今日はどうしていけばいいのかと、視線を落とすと、登良ちん頑張ろうぜ!と光が肩を叩く。弱弱しく登良は頷く。カラカラと光が笑うのを聞きながら、あの『S3』について調べないとなぁ、と脳内に予定を叩き込む。

「ごめんな、遅れて来た癖に何か仕切っちゃって」
「に〜ちゃんが抜けちゃいましたからね、突っ走っちゃう光くんとのろまなぼくが真ん中を友也くんが手ぇ繋いで、登良くんがすぐ後ろを歩いてくれて取り持ってくれないと。」
「負担だから、それ。創。」
「この調子だと、次の『Ra*bits』のリーダーは友也くんかもしれませんね。」
「早く行こう?開いてなかったら困るし。」

登良の一声で、そうだね。と口々に言う。光がはしゃいで窓から飛び降りようぜ。と登良を巻き込んで走っていくが、ふと窓の外に何かを見つけて、登良はぐっと光を止めて、なにだあれと見つめる。窓の外に見える。登良ちゃんどーしたの?と聞かれて登良はその点を指で示す。なになに?と光が窓から身を乗り出してなんだあれ?と指をさす。登良たちはその点を見つめてなにだろうと議論していると、友也がハッとして、「変態仮面の熱気球だ…あのひとなにやってるんだ?」と怪訝そうな顔をしてその熱気球を見ていると、スピーカーに乗って音が聞こえる。「Amazing!お待たせしましたっ、あなたの日々樹渉です☆」なんて聞こえて、友也が窓から顔を出して喉を震わせる。それに驚いて登良は創と共に窓から離す。

「何かどうもお仕事中みたいですよ?ほら、なぜかカードみたいなのをばらまいてますし?」
「キャッチ!カードを拾ったぜこれってチラシみたいなのかも?な?登良ちゃん。」

光が手に入れたカードを回す。登良の手元にカードが着た頃に【ミステリーステージ】についての詳細が書いてあった。に〜ちゃんの話によると、演劇部の部長が友也を連れまわして今回倒れたとも聞いていたので、自然と眉根が寄る。これも『Knights』の出している問題なのだろうかと、頭を抱える。今日のステージの際に聞いてもいいのかもしれない。
鞄からノートを一冊取り出して、自分のToDoのリストに書き加える。自分のメモの中にあった一説が目に映る。講堂もしらべること。そう書いてあって、登良の皺が深くなる。自分のメモに違和感を覚えつつも、リストに強く線を引く。嘘をつかれたら仕方ないかもしれないが、演劇部部長は『Knights』でないと覚えている。
トランプサイズの宣伝チラシに手間乗っかった角丸とエンボス。裏面は白黒のチェスの盤面のような模様に、指を添わせる。指を口に当てて自分の唇がとがってることに気が付いて、登良はとがっている唇を戻す。昨日と一昨日の歌詞を思い浮かべていると、友也の大きな声が聞こえて登良は小さく飛ぶ。そのまま友也を見ると、熱気球の先輩と話をしているので、登良はすこし離れて、また紙を広げる。




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